介護保険の住宅改修の使い方——上限20万円・自己負担1〜3割、対象になる6つの工事と「工事の前に申請」の正しい順番
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親の退院が決まった、家の中の転倒が心配になってきた——「介護保険で手すりが付けられるらしい」と聞いて、手続きを調べに来た方が多いと思います。
結論から言うと、介護保険の住宅改修は工事費20万円までを上限に、その7〜9割が戻る(自己負担1〜3割)全国共通の制度です。使えるのは要支援・要介護の認定を受けた人。そして最大の注意点は、工事を始める前に申請しないと使えないことです。
この記事では、厚生労働省と自治体の公式資料で確認した情報(確認日2026年7月18日)だけで、対象になる工事・お金の戻り方・枠のルール・申請の順番を、使う人の目線で整理します。
先に結論
✓ ここが要点
いくら——工事費20万円までが対象で、その7〜9割が戻ります(自己負担は所得により1〜3割)。 誰が——要支援1〜2・要介護1〜5の認定を受けた人。自分が住んでいる家の工事が対象です。 いつ——申請は工事を始める前。着工後の申請は原則対象外です。 期限はない——年度の予算で締め切られる補助金と違い、ずっと続く制度です。焦って契約する必要はありません。
なお、介護リフォームに使えるお金は、この介護保険(1階)に加えて「市区町村の上乗せ(2階)」「税金の軽減(3階)」があります。お金の全体像は介護リフォームの補助金はいくら?(3階建てのしくみ)にまとめています。この記事は、その1階部分の使い方を深掘りするものです。
対象になる6つの工事
厚生労働省の資料に定められた、対象工事の6種類です(かっこ内は正式な呼び方)。
| 工事 | 内容の例 |
|---|---|
| ① 手すりの取付け | 廊下・トイレ・お風呂・玄関・階段に手すりを付ける |
| ② 段差の解消 | 敷居の段差をなくす・スロープを付ける・お風呂の床のかさ上げ |
| ③ 床や通路の材料の変更(滑りの防止など) | 滑りやすい床材を滑りにくいものに変える・畳から板の床へ |
| ④ 引き戸などへの扉の取替え | 開き戸を引き戸・折れ戸に替える・ドアノブの変更・戸車の設置 |
| ⑤ 洋式便器などへの便器の取替え | 和式トイレを洋式にする |
| ⑥ 付帯して必要になる工事 | 手すりを付けるための壁の下地補強など、①〜⑤にともなう工事 |
※ 表は横にスクロールできます
見落とされやすいのですが、家の中だけでなく、玄関から道路までの屋外の通路も対象です(庭のスロープや屋外の手すりなど)。
工事別の深掘りは、①の手すりは手すりの取り付けの費用と補助金(箇所別の相場・置くだけレンタルとの使い分け)、⑤のトイレは和式から洋式への交換の費用と補助金(対象になる範囲・水洗化の扱い)にまとめています。
一方で、対象にならないものもはっきりしています。
向いている人
- 認定を受けた本人が住んでいる家の、上の6種類の工事
- 玄関から道路までの、屋外の通路の手すり・スロープ
- 家族名義・賃貸の家の工事(所有者の承諾書が必要になるのが一般的です)
向いていない人
- 新築・増築の工事(部屋を増やす・新しく建てるは対象外)
- 古くなった設備を同じものに取り替えるだけの工事(老朽化の修繕は対象外)
- 工事をともなわない、置くだけの手すりや持ち運べるスロープ(こちらは福祉用具のレンタル・購入の枠になります)
「これは対象になるのか?」の判断は市によって細部が違うので、迷ったら見積もりの段階でケアマネジャーと市の窓口に確認するのが確実です。
いくら戻る?(数字の翻訳)
「20万円・7〜9割」を実際の工事に当てはめてみます。
◆ ケースで考える
手すりの取付けと段差の解消で、工事費15万円の場合。 自己負担1割の人:13万5,000円が戻り、実質負担は1万5,000円。 自己負担3割の人:10万5,000円が戻り、実質負担は4万5,000円。 一方、トイレとお風呂をまとめて直して工事費30万円になった場合、対象になるのは20万円まで。1割負担の人で18万円が戻り、枠を超えた10万円は全額自己負担です。
枠を超えそうなとき・対象外の工事が混ざるときに効いてくるのが、市区町村の上乗せ助成です。上限100万円台の市もあれば無い市もあります——自分の市にあるかは市区町村別の一覧か助成金チェッカーで確認できます。
20万円の枠のルール(リセットと分割)
**基本は「一人につき生涯20万円まで」**です。ただし、公式に枠が復活する場合が2つあります。
① 3段階リセット——介護の必要度が大きく上がったとき。要支援・要介護は次の6段階に並べて数えます。
| 段階 | 認定 |
|---|---|
| 第1段階 | 要支援1 |
| 第2段階 | 要支援2・要介護1 |
| 第3段階 | 要介護2 |
| 第4段階 | 要介護3 |
| 第5段階 | 要介護4 |
| 第6段階 | 要介護5 |
※ 表は横にスクロールできます
最初に工事をしたときの段階から3段階以上上がると、もう一度20万円の枠が使えます(例:要介護1のときに使った人が、要介護4になった場合)。「要支援2→要介護1」は同じ第2段階なので数えません。このリセットは同じ人・同じ家について1回だけです。
② 転居リセット——引っ越した場合は、新しい家について改めて20万円の枠が使えます(元の家に戻った場合は、元の家の使用済み枠が戻ります)。
また、20万円は一度で使い切る必要はありません。まず手すりだけ付けて、後日トイレを直す——という分け方ができる扱いが一般的です。残り枠がいくらかは、市の介護保険の窓口で確認できます。
✎ 私の調査メモ
この記事の枠のルールは、厚生労働省の公式資料「介護保険における住宅改修」と、支給限度基準額を定める告示(平成12年厚生省告示第35号)、自治体の公式案内(八王子市・横浜市・新宿区など)を突き合わせて確認しました(確認日2026年7月18日)。20万円という上限は制度が始まった2000年から変わっておらず、2026年度の介護報酬の見直しでも変更されていません。
申請の流れ(「事前申請→工事→完了報告」の二段構え)
申請は「工事の前」と「工事の後」の二段構えです。
ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談する
どこをどう直すべきかを一緒に考える。ここが出発点
要支援・要介護の認定を確認する
認定がまだなら市へ申請。認定が下りてから工事の計画へ
「住宅改修が必要な理由書」を作ってもらう
多くの場合ケアマネジャーなどが作成する、申請の必須書類
工事の前に市へ申請する
理由書・見積書・工事前の写真などを提出。ここが最重要
市の確認結果を待ってから着工する
市が内容を確認し、結果の連絡が来てから工事を始める
工事後に完了の申請をする
領収書・工事後の写真などを提出
支給される
内容の確認後、7〜9割分が振り込まれる
日数の感覚として、認定から市の確認まで書類のやりとりに時間がかかるため、「退院までに手すりを」のような期限があるときほど、早くケアマネジャーに相談するのが正解です。
お金の払い方:償還払いと受領委任払い
戻り方には2つの方式があります。
- 償還払い(原則)——工事代金をいったん全額支払い、あとから7〜9割が戻る方式。20万円の工事なら、一時的に20万円を立て替える資金が必要です
- 受領委任払い(市区町村による)——最初から自己負担分(1〜3割)だけ支払えば済む方式。20万円の工事でも、1割負担の人なら支払いは2万円で済みます。ただし市に登録した事業者に頼んだ場合に限ることが多いです
立て替えの負担が大きい場合は、申請の前に「受領委任払いが使えるか」「使える登録業者はどこか」を市の窓口で確認してください。ここは業者選びにも直結します。
落とし穴:ここでつまずく人が多い
! ここに注意
工事を始めてから申請しても、原則対象外です。 「先に工事して、あとで申請すればいい」は通用しません(やむを得ない事情の例外はありますが、あてにしないでください)。「介護保険で無料で直せます」などと勧誘して先に契約させようとする訪問販売にも注意——この制度は事前申請と市の確認が組み込まれているので、正規の手順を踏まない話はその時点で疑ってください。
そのほかの注意点です。
- 認定が前提——申請できるのは要支援・要介護の認定を受けてから。「認定申請中」の扱いは市に確認を
- 入院中の工事は扱いが分かれる——退院に向けて先に直したい場合は、勝手に進めず、まずケアマネジャーと市に相談してください
- 同じ工事の二重取りはできない——市の上乗せ助成と併用する場合も、同じ工事費に重ねて受け取ることはできません
業者選び:制度に慣れた業者かで負担が変わる
介護保険の住宅改修は、理由書・見積書・工事前後の写真と、業者の協力が必要な書類が多い制度です。さらに受領委任払いを使うなら、市に登録した事業者であることが条件になる場合が多い——業者選びがそのまま、立て替え負担の有無に直結します。
✓ ここが要点
見積もりのときに、次の3つを確認してください。
- 介護保険の住宅改修の手続きに慣れているか?(書類の用意に協力してくれるか)
- 市の受領委任払いの登録事業者か?(自己負担分だけの支払いで済むか)
- 介護保険の対象になる工事と、ならない工事を分けて見積もってくれるか?
1社だけの話で決めると、対象の切り分けや受け取れる額の組み合わせを確かめようがありません。複数の業者から見積もりを取り、制度への対応を並べて比べるのがおすすめです。
内窓・断熱リフォーム、補助金に慣れた業者を見つける
窓・断熱・水回りなどリフォーム全般に対応した一括見積もりサービスです。補助金の対象工事に慣れた業者かどうかを、見積もりの場で確認できます。
- リフォーム全般に対応。複数社をまとめて比較できます
- 紹介された会社は断ってOK。運営に断りを頼むこともできます
- 補助金の対象になる工事に慣れた業者かを確認できます
見積もりを見てから決められます。依頼する義務はありません。
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よくある質問
介護保険の住宅改修とは、どんな制度ですか?
要支援1〜2・要介護1〜5の認定を受けた人が、自宅を安全に暮らせるように直すとき、工事費20万円までを上限に、その7〜9割が介護保険から戻る制度です(自己負担は所得により1〜3割)。全国共通で、年度の予算で締め切られることのない、ずっと続く制度です。ただし工事を始める前の申請が条件で、着工後の申請は原則対象外になります。
どんな工事が対象になりますか?
①手すりの取付け②段差の解消③滑りの防止などのための床や通路の材料の変更④引き戸などへの扉の取替え⑤洋式便器などへの便器の取替え⑥これらに付帯して必要になる工事、の6種類です。玄関から道路までの屋外の通路も対象に含まれます。一方、新築や増築、古くなった設備を同じものに直すだけの工事は対象外です。
20万円の枠は一度しか使えませんか?
基本は「一人につき生涯20万円まで」ですが、枠が復活する場合が2つあります。①介護の必要度が大きく上がったとき(要支援・要介護を6段階に並べて、最初に使ったときから3段階以上上がった場合。同じ人・同じ家で1回だけ)②転居したとき。また、20万円は一度で使い切る必要はなく、枠の範囲で数回に分けて使える扱いが一般的です。残り枠は市の介護保険の窓口で確認できます。
お金はいつ、どうやって戻りますか?
原則は「償還払い」——工事代金をいったん全額支払い、完了後の申請でその7〜9割が戻る方式です。市区町村によっては「受領委任払い」——最初から自己負担分(1〜3割)だけ支払えば済む方式が使えますが、市に登録した事業者に頼んだ場合に限られることが多いです。お住まいの市がどちらに対応しているかは、介護保険の窓口で確認してください。
申請は誰に相談すれば進みますか?
まず担当のケアマネジャー(介護の計画を立てる専門職)か、地域包括支援センター(高齢者の暮らしの相談窓口)に相談してください。申請には「住宅改修が必要な理由書」という書類が必要で、多くの場合ケアマネジャーなどが作成します。そのうえで、見積書や工事前の写真を添えて市に事前申請し、市の確認結果が届いてから工事を始める流れです。
まとめ
- 介護保険の住宅改修は工事費20万円まで・7〜9割が戻る(自己負担1〜3割)全国共通の制度。2000年から続き、期限も年度の予算締切もない
- 対象は6種類の工事(手すり・段差・床材・引き戸・洋式便器・付帯工事)。屋外の通路も対象、新築・増築・老朽修繕は対象外
- 鉄則は「工事を始める前の申請」。順番は「ケアマネ相談→理由書→事前申請→市の確認→着工→完了報告」
- 枠は3段階リセット(6段階で3つ以上上昇・1回だけ)と転居で復活。分けて使うこともできる
- 立て替えが厳しければ受領委任払い(自己負担分だけの支払い・市の登録業者に限る場合が多い)を市に確認
- 20万円で足りない分は市の上乗せ+税金の軽減へ→3階建てのしくみ/自分の市の上乗せは→市区町村別の一覧
※本記事の制度情報は2026年7月18日時点で厚生労働省・各自治体の公式資料を確認したものです。運用の細部(受領委任払いの有無・書類・認定申請中の扱いなど)は市区町村で異なります。工事の前に、必ずケアマネジャー・市の介護保険窓口でご確認ください。
参考情報(出典・すべて2026年7月18日確認)
家の補助金ナビ編集部
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