隣の家の解体工事がうるさい——音・揺れ・虫のそれぞれに、相談する先が決まっています
隣の家の解体工事が始まりました。朝から重機の音が響いて、家が細かく揺れる。窓は開けられず、洗濯物も出しにくい。
工事だから仕方ない、とは思っています。それでも、いつまで続くのか、どこまでが「普通の工事」なのかが分からないと、我慢だけが積み上がります。
結論から言うと、大きな音や振動を出す解体作業には法律の基準があります。音は85デシベル・振動は75デシベルまで。住宅地の多くでは夜7時から朝7時までは作業できず、日曜・休日は原則作業なしです。
そして、苦情・相談の公的な窓口は市区町村の環境担当課です。虫やねずみの相談は別ルートで、保健所側にあります。
我慢かクレームかの二択ではありません。この記事では、音・揺れ・虫のそれぞれについて、基準と相談先を一次情報で整理します。
先に結論
✓ ここが要点
音と振動には基準があります — 騒音85デシベル・振動75デシベル(敷地境界の線上で測定)。住宅地の多くで夜7時〜朝7時は作業不可、1日10時間以内、連続6日以内、日曜・休日は原則作業なし
言う順番は2段です — まず現場の責任者(連絡先は現場の標識・掲示板に書いてあります)。変わらなければ市区町村の環境担当課へ。市町村長には改善を勧告・命令する権限があります
虫・ねずみは保健所側です — 駆除は所有者・管理者が行うものとされていますが、相談・機材の貸出し・業者案内の窓口があります
大きな音の作業には、法律の線引きがあります
解体工事のうち、大型の重機やコンクリートを砕く機械を使う作業は、騒音規制法・振動規制法の特定建設作業という枠に入ることがあります。たとえば騒音規制法施行令は、次のような作業を挙げています。
バックホウ(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が八〇キロワット以上のものに限る。)を使用する作業
規制の対象になる地域(指定地域)で特定建設作業をする業者は、作業開始の7日前までに市区町村へ届出が必要です(騒音規制法第14条)。つまり、お住まいの市は隣の工事を先に知っている建前になっています。
基準の中身は、神戸市がこう要約しています。
特定建設作業に伴い、騒音であれば85dB、振動であれば75dBを超過することにより、周辺の生活環境が著しく損なわれると認められるとき
測るのは家の中ではなく、工事現場の敷地境界の線上です。数字に加えて、時間と曜日のルールがあります。国の基準(昭和43年告示)から、住宅地の多く(1号区域)にかかる部分を挙げます。
- 時間帯 — 「午後七時から翌日の午前七時までの時間内」の作業で発生する騒音でないこと
- 1日の長さ — 「一日十時間」を超える作業でないこと
- 連続日数 — 「連続して六日」を超える作業でないこと
- 曜日 — 「日曜日その他の休日に行われる特定建設作業に伴つて発生するものでないこと」
いずれも災害時などの例外つきで、区域の区分(1号・2号)は市区町村ごとに決まっています。
ここで正直に書いておくと、すべての解体作業がこの枠に入るわけではありません。小さい機械や手作業の解体は特定建設作業に該当しないことがあります。ただ、該当するかどうかの線引きを自分で判定する必要はありません。時間帯や曜日がおかしい、音が明らかに大きい——その事実を日時つきで市に伝えれば、判定と対応は市の仕事です。
「うるさい」は、まず誰に言うのか
順番は2段です。
1段目は、現場の責任者。 解体工事の現場には、法律と自治体のルールで表示物があります。建設リサイクル法第33条は、解体工事業者に対し「その営業所及び解体工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、商号、名称又は氏名、登録番号その他主務省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない」と定めています。世田谷区は特定建設作業の届出のページで、工事側にこう求めています。
工事現場には、住民向けに工事概要・作業日程・責任者の氏名・連絡先等を明記した掲示板を設置する。
現場には、工事責任者が常駐し、住民から苦情申し立てがあった場合は誠意をもって対処する。
つまり、誰に言えばいいかは現場に掲示されているのが本来の姿です。作業時間や散水など、現場で直せることは責任者に伝えるのがいちばん早く着きます。
2段目は、市区町村の環境担当課。 大阪府は特定建設作業の案内で、騒音・振動に関する相談窓口として「各市町村の環境担当課」を挙げています。窓口が市区町村なのは、権限が市町村長にあるからです。騒音規制法第15条は、基準に合わない特定建設作業について、市町村長が「騒音の防止の方法を改善し、又は特定建設作業の作業時間を変更すべきことを勧告することができる」とし、さらに勧告に従わない場合はこう続けます。
市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないで特定建設作業を行つているときは、期限を定めて、同項の事態を除去するために必要な限度において、騒音の防止の方法の改善又は特定建設作業の作業時間の変更を命ずることができる。
相談のときに効くのは、感想ではなく記録です。日付・時間帯・様子(機械の種類が分かれば)を並べたメモが、そのまま市が動くための材料になります。
家が揺れる・ひびが入ったかもしれない
揺れには振動規制法側の基準(75デシベル・敷地境界で測定)があり、基準に収まっているかの相談先は音と同じく市区町村です。
ただし、ひびの補修のような損害の話は、規制とは別のレーンです。市は作業を基準に収めさせることはできますが、補修費を決めて払わせる場ではありません。損害の話は工事側との民事の話し合いになります。
だからこそ、記録が要ります。
- 家の写真 — 工事前に撮れていればいちばん強く、撮れていなくても気づいた時点で日付つきで撮っておきます
- 揺れの日時のメモ — 大きく揺れた日時と様子
- 相手の特定 — 現場の標識に業者名・登録番号・連絡先が書かれています。工事を頼んだ人(隣家の所有者)側にも伝わる形にしておきます
なお、解体を頼む側に立つと、この問題は「工事前の近隣への説明と家屋の記録」で先回りできます。壊す側の段取りは解体工事の近所への挨拶——どこまで回るのか、いつ行くのか、手紙でもいいのかに書いています。
ねずみ・ゴキブリが出るようになった
解体のあとに虫やねずみが増えた——気のせいではなく、公式に知られた現象です。新宿区の案内にこうあります。
解体工事や引っ越し等で食べ物が得られなくなると、棲息していたねずみが周辺に移動する可能性があります。
だから、駆除は壊す前が効くとされています。実際に、解体工事の手続きの中に組み込んでいる区があります。千代田区の解体工事計画の事前周知の案内には、こうあります。
解体工事を行う場合、事前に「石綿(アスベスト)の調査」、「ねずみの生息調査」、「標識設置」と「住民説明」が必要です。
ねずみの生息が分かった時は、解体工事前に駆除を行うこと。
実施するのは、工事を頼む側と請け負う業者の側です。中野区も2025年3月12日に、事前にねずみ等の駆除を行うことを指導項目として要綱に追加しました(いずれも2026年8月10日確認)。
もう出てしまった側ができることは、次の3つです。
- 市区町村の衛生担当に相談する — 横浜市は、駆除方法の説明・駆除機材の貸出し・駆除業者の案内を生活衛生の窓口で行っています。川崎市も各区役所の衛生課で相談と捕獲器の貸出しをしています
- 役所が駆除してくれるとは考えない — 新宿区は「区で駆除は行っていません。」と明記しています。駆除は発生源や自宅を所有・管理する側が行うのが原則です(横浜市FAQ)
- これから隣が壊されると知ったら、先に聞く — 挨拶に来たタイミングで「ねずみの駆除はされますか」と聞くのは正当な質問です。事前の駆除を工事側に求めている区があるくらいです
いつまで続くのか
不安の正体の半分は「終わりが見えないこと」です。これには確かめる場所があります。
現場の標識です。 建設リサイクル法にもとづく標識には工事の名称・場所・期間、工事を頼んだ人と業者の名前が記され、世田谷区のように掲示板へ作業日程まで書くよう求める自治体もあります。特定建設作業の基準では、うるさい作業そのものは「連続して六日」を超えない枠に収まる建前です。
標識の期間欄と、掲示板の作業日程。この2つを見れば、あと何日かの見当がつきます。
つまずくのは、ここです
! ここに注意
① いきなり感情で伝えて、こじれる。 順番は、現場の責任者→市区町村の環境担当課です。日時のメモを持って淡々と伝えるほうが、結果として早く止まります。
② 記録を残していない。 揺れ・時間外の作業は、日時のメモと写真がないと「言った言わない」になります。気づいた日から記録を始めてください。
③ 夜間や日曜の作業を「そういうものか」と流す。 特定建設作業には時間と曜日の基準があります。基準の存在を知っているだけで、相談の入り口に立てます。
よくある質問
解体工事は何時から何時まで認められていますか?
大きな音や振動を出す作業が騒音規制法・振動規制法の「特定建設作業」にあたる場合、住宅地の多く(1号区域)では午後7時から翌日の午前7時までの時間帯に作業しないこと、1日の作業は10時間以内、連続6日以内という基準が定められています(昭和43年の国の基準・確認日2026年8月10日)。区域の区分は市区町村ごとに決まっているので、正確な線引きはお住まいの市の環境担当課で確認できます。
日曜日も解体工事はできるのですか?
特定建設作業にあたる作業については、国の基準で「日曜日その他の休日に行われる特定建設作業に伴つて発生するものでないこと」とされており、災害時などの例外を除いて日曜・休日の作業は基準に合いません。日曜に大きな音の作業が続くようなら、日時をメモして市区町村の環境担当課に伝えてください。
解体工事の苦情はどこに言えばいいですか?
順番は2段です。まず現場の責任者に伝えます。世田谷区は特定建設作業の届出のページで、工事現場に住民向けの掲示板(工事概要・作業日程・責任者の氏名・連絡先)を設置し、苦情申し立てには誠意をもって対処するよう工事側に求めています。それで変わらなければ、市区町村の環境担当課が公的な相談窓口です。騒音規制法は、基準に合わない特定建設作業について市町村長が改善を勧告し、従わないときは命令できると定めています。
隣の解体工事で家が揺れます。ひびが入ったらどうすればいいですか?
振動には75デシベルという基準があり、敷地境界の線上で測定します。基準に収まっているかの相談は市区町村の環境担当課へ。一方、ひびの補修など損害の話は工事側との民事の話し合いになるため、市が金額を裁定するわけではありません。工事が始まる前後の家の写真と、揺れが大きかった日時のメモを残し、現場の標識に書かれている業者名・連絡先を控えたうえで、現場責任者と、工事を頼んだ隣家側に伝えてください。
隣の家の解体があってから、ねずみやゴキブリが出るようになりました。
新宿区は「解体工事や引っ越し等で食べ物が得られなくなると、棲息していたねずみが周辺に移動する可能性があります。」と案内しており、解体をきっかけにした移動は公式に知られた現象です。多くの自治体で、駆除そのものは発生源や自宅の所有者・管理者が行うものとされていますが、保健所や区役所の衛生担当で駆除方法の相談・捕獲器などの機材の貸出し・業者の案内を受けられます(横浜市・川崎市で確認)。まずお住まいの市区町村の衛生担当に電話してください。
まとめ
- 基準はあります。 騒音85デシベル・振動75デシベル、住宅地の多くで夜7時〜朝7時は作業不可、1日10時間・連続6日以内、日曜・休日は原則作業なし
- 言う順番は、現場→市。 現場の標識と掲示板に責任者と連絡先が書かれています。変わらなければ市区町村の環境担当課へ。市町村長には勧告・命令の権限があります
- 記録がいちばんの武器です。 日時のメモと写真。感想より事実が市を動かします
- 虫・ねずみは保健所側へ。 駆除は所有者・管理者側の仕事ですが、相談・機材貸出し・業者案内の窓口があります
- 終わりは標識で確かめられます。 工事の期間・工事を頼んだ人・業者名は現場に掲示されています
ご自身がいずれ実家などを壊す側に回るなら、今回の経験は段取りにそのまま活きます。壊す側の近隣対応は解体工事の近所への挨拶——どこまで回るのか、いつ行くのか、手紙でもいいのかに、解体の補助金は市区町村別の解体補助DBにまとめています。
※本記事の基準・条文・自治体の運用は2026年8月10日時点で各公式ページ・法令の原文を確認したものです。区域の区分や要綱の内容は市区町村ごとに異なります。個別の判断は、お住まいの市区町村の環境担当課・衛生担当にご確認ください。
参考情報(出典)
- 特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準(環境省)(確認日 2026-08-10)
- 騒音規制法(e-Gov法令検索)第14条・第15条(確認日 2026-08-10)
- 騒音規制法施行令(e-Gov法令検索)別表第二(確認日 2026-08-10)
- 建設工事の騒音・振動の基準(神戸市)(確認日 2026-08-10)
- 特定建設作業の届出(世田谷区)(確認日 2026-08-10)
- 特定建設作業の規制について(大阪府)(確認日 2026-08-10)
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(e-Gov法令検索)第33条(確認日 2026-08-10)
- ねずみにお困りの方へ(新宿区)(確認日 2026-08-10)
- 建築物解体工事計画の事前周知要綱の概要(千代田区)(確認日 2026-08-10)
- 建築物の解体工事をする場合は事前周知をお願いします(中野区)(確認日 2026-08-10)
- ねずみ・害虫を駆除してほしい。(横浜市FAQ)(確認日 2026-08-10)
- ねずみなどの衛生害虫駆除について相談したい。(川崎市FAQ)(確認日 2026-08-10)
家の補助金ナビ編集部
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