頼むまえに

解体工事の近所への挨拶——どこまで回るのか、いつ行くのか、手紙でもいいのか

公開 2026年8月2日最終更新 2026年8月2日執筆 家の補助金ナビ編集部

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実家を解体すると決めたあと、多くの方が最後まで気にするのが近所への挨拶です。

長く親が住んでいた家なら、隣の方とは何十年の付き合いがあります。自分はもうその町にいない。それでも、音とほこりで迷惑をかけるのは確かです。どこまで回ればいいのか、何と言えばいいのか——正解が見えません。

ところが、区市町村の要綱を読むと、説明する範囲がはっきり決められていることがあります。しかも、調べた2つの区で基準が一致していました。

結論から言うと、範囲の目安は解体する建物の高さの2倍・30メートルを超えない範囲です。時期は自治体でばらつきがあり、工事開始の3日前までから15日前までまで幅があります。

この記事では、範囲・時期・誰が行くか・手紙でいいのか・現場に立つ標識まで、一次情報で整理します。

先に結論

✓ ここが要点

範囲には、公的な目安があります — 新宿区も世田谷区も、説明の範囲を建物の高さの2倍・30メートルを超えない範囲と定めていました。二階建ての木造なら、およそ12メートル。向かい・両隣・裏がおおむね入ります

時期は自治体でばらばらです — 新宿区は工事開始の15日前まで(木造は7日前)、世田谷区は3日前まで。まずお住まいの市区町村に決まりがあるかを確認してください

業者と分担するのが現実的です — 工事の内容・期間・連絡先は業者、あいさつと事情の説明は所有者側。誰が回るかは契約のときに決めます

「どこまで回るのか」には、答えの型があります

近所への挨拶は、法律で全国一律に義務づけられているものではありません。ですが、区市町村が要綱で範囲と期日を決めていることがあります

編集部が公式ページで確認した2つの区は、次のようになっていました(いずれも2026年8月2日確認)。

新宿区 世田谷区
根拠 新宿区建築物の解体工事等の事前周知に関する要綱 世田谷区建築物等の解体工事等の事前周知に関する指導要綱
対象 解体床面積の合計が80平方メートル以上、または騒音規制法・振動規制法の特定建設作業を行う場合 特定建設作業に該当する作業、石綿の除去の届出が必要な作業、建設リサイクル法の届出が必要な作業
説明する範囲 敷地境界から建物の高さの2倍の水平距離で、30メートルを超えない範囲の住宅・事業所・マンション 解体する建物の高さの2倍の範囲。30メートルを超える場合は30メートルの範囲内
説明の時期 工事開始の15日前まで(木造は7日前) 工事開始日から3日前まで
標識の設置 工事開始の30日前まで(木造は15日前)。工事が完了するまで掲示 工事開始の7日前まで(吹付け石綿がある場合は14日前)。工事が完了するまで掲示
区への報告 工事開始の7日前までに報告書を提出 建設リサイクル法の対象なら、工事開始日の前日までに報告書を提出

※ 表は横にスクロールできます

見ていただきたいのは、範囲の考え方が2区で完全に一致している点です。距離を一律で決めるのではなく、建物の高さから決める。高い建物ほど音とほこりが遠くまで届くからです。

数字を暮らしの単位に翻訳します。二階建ての木造住宅なら、高さはおおむね6メートル前後。その2倍でおよそ12メートルです。道路をはさんだ向かい、両隣、裏の家がだいたい入ります。三階建てやビルなら、範囲はもっと広がります。

✎ 私の調査メモ

編集部が確認したのは、新宿区と世田谷区の公式ページに掲載された要綱の内容です(2026年8月2日確認)。

ここで大事なのは、この2区に決まりがあったからといって、全国どこでも同じ決まりがあるわけではないということです。要綱を持たない市区町村のほうが多いと思われますし、持っていても数字が違う可能性があります。

ですから、この表は「全国のルール」ではありません。要綱がある地域では公的な答えがある、という事実と、要綱がない地域でも使える目安として読んでください。

自分の市区町村に決まりがあるかを調べるには、市のサイトで「解体 事前周知」または「解体工事 標識」と検索するのが早い方法です。出てこなければ、建築指導の担当課に電話で聞けば分かります。

「いつ行くのか」は、標識より後、工事より前

期日は自治体でばらつきますが、順番は共通しています。

  1. 標識を立てる

    工事の名称・場所・期間・発注者と施工者・連絡先などを記した標識を、道路から見える場所に掲示します

  2. 近所へ説明する

    標識が立ってから、工事が始まるまでのあいだに回ります

  3. 市区町村へ報告する

    要綱がある地域では、説明したことを報告書で区市町村に出します

  4. 工事を始める

    工事のあいだも標識は掲示したままです

標識が先に立つのがポイントです。近所の方は、標識を見て「壊すらしい」と先に知ります。そこから何の説明もない期間が長いほど、不安と不満が積もります。

新宿区の要綱で標識が30日前(木造は15日前)、説明が15日前(木造は7日前)と、標識のほうが早く設定されているのもこの順番のためです。

要綱がない地域では、工事の1週間前までに回るのが一般的です。直前すぎると「もう決まったあとに言われた」と受け取られますし、早すぎると忘れられます。

誰が行くのか

工事の内容を説明するのは業者です。要綱でも、説明の主体を工事の施工者としている運用が一般的です。

ただ、実家の解体では、所有者や相続人が一緒に回ると受け止め方が変わります。長く親が世話になった家ならなおさらです。

現実的な分担は、次のようになります。

伝えること 誰が
工事の期間・作業の時間帯・重機の種類・車両の出入り 業者
現場の連絡先・苦情の窓口 業者
誰の家なのか・なぜ解体するのか 所有者・相続人
これまでのお礼 所有者・相続人

※ 表は横にスクロールできます

誰が回るかは、契約のときに業者と決めてください。 お互いに「相手が行くだろう」と思っていて、結局誰も行かなかった——これがいちばんまずい形です。

業者を選ぶ段階では、市の解体補助に慣れているかどうかも効いてきます。市内の業者に限る市が多く、そうした業者は近隣への説明にも慣れています。自分の市の制度は市区町村別の一覧で確認できます。

何を伝えるか

近所の方が知りたいのは、気持ちよりも具体的な予定です。

  • いつからいつまでか — 期間。天候で延びることがある点も先に伝えます
  • 何時から何時までか — 作業の時間帯。朝早い作業があるかどうか
  • どんな音・振動が出るか — 重機を使う日、手作業の日
  • 道路をどう使うか — 工事車両の駐車、通行の妨げになる時間帯
  • 困ったときの連絡先 — 現場の責任者の名前と電話番号

洗濯物・車・ペットへの影響を気にされる方が多いので、ほこりの出る日が分かるなら、それも伝えると喜ばれます

期間を伝えるには、片づけがいつ終わるかの見通しが要ります。家財の片づけにかかる時間と費用は空き家の家財は解体の前に片づけないといけないのかにまとめました。

粗品は必須ではありません。持っていく場合も、高価なものより、渡しやすい日用品が向いています。

遠方で行けないときは、手紙で

実家が遠く、何度も通えない方は多いと思います。手紙は現実的な選択肢です。

手紙に書くのは、次の5つです。

✓ ここが要点

① 誰の家の解体か — 「◯◯の長男の◯◯です」など、近所の方が思い出せる書き方で

② いつからいつまで、何時から何時までの工事か

③ 業者名と、現場の連絡先(苦情の受け皿をはっきりさせます)

④ これまでのお礼(長く住んでいた家なら、ここが本題です)

⑤ 直接伺えないことへのお詫び

ご自身の連絡先を書くかどうかは任意です。書けば丁寧ですが、苦情が業者を通さず直接届くことになります。どちらを選ぶかは、通える距離かどうかで決めてください。

工事の初日か最終日にだけ行ける場合は、その日に改めて回ると印象が変わります。「終わりました。ありがとうございました」の一往復があるかどうかで、更地になったあとの土地の話がしやすくなります。

現場に掲示されるもの——標識と、石綿の調査結果

工事現場に立つ掲示は、実は2種類あります。

ひとつは、建設リサイクル法にもとづく標識です。床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事では、工事に着手する日の7日前までに都道府県知事への届出が必要で、その内容が現場に掲示されます。届出の義務者は工事を頼んだ側である点は、実家を解体するまえにやることにまとめました。

もうひとつが、石綿(アスベスト)の事前調査の結果です。床面積の合計が80平方メートル以上の建築物を解体する工事では、事前調査の結果を都道府県などに報告することが必要で、調査結果は作業場所に備え付けて掲示することとされています。記録は3年間保存します。

そして令和5年10月1日に着工する工事からは、この事前調査を建築物石綿含有建材調査者などの資格を持つ人が行う必要があります

近所の方から「アスベストは大丈夫なのか」と聞かれることは珍しくありません。調査の結果が現場に掲示されていることを伝えられれば、それが答えになります。業者に、掲示の内容を事前に見せてもらってください。

なお、事前調査の費用は補助の対象外だと明記している市があります(苫小牧市・糸島市。2026年7月〜8月確認)。見積もりの段階で、調査費が含まれているかを確かめておくと安心です。

つまずくのは、ここです

! ここに注意

① 「業者が行くだろう」と双方が思っている。 誰がどこまで回るかを、契約のときに決めてください。要綱がある地域では、説明したことの報告書を区市町村に出す必要もあります。

② 標識が立ってから、説明までが空きすぎる。 標識のほうが先に立つ決まりの区があります。近所の方は標識を見て先に知るので、空白が長いほど不安になります。

③ 音・振動の届出は業者の側の手続きです。 騒音規制法・振動規制法の特定建設作業にあたる工事は、作業開始の7日前までに市区町村長への届出が必要です。挨拶とは別に、この届出が出ているかも確認してください。

よくある質問

解体工事の挨拶は、どこまで回ればいいですか?

区市町村の要綱に範囲が書かれていることがあります。新宿区の要綱は「建築物の敷地境界からその高さの2倍の水平距離で、30メートルを超えない範囲」、世田谷区の要綱は「解体工事等を施工する建築物等の高さの2倍の範囲(30メートルを超える場合は30メートルの範囲内)」と定めており、2区で基準がそろっています(いずれも2026年8月2日確認)。要綱のない地域でも、この「高さの2倍・30メートル以内」は目安として使えます。二階建ての木造住宅なら高さは6メートル前後なので、その2倍でおよそ12メートル。向かい・両隣・裏の家がおおむね入る範囲です。

挨拶はいつ行けばいいですか?

自治体によって期日が違います。新宿区の要綱では工事開始の15日前(木造は7日前)まで、世田谷区の要綱では工事開始日から3日前までに説明することとされています。要綱がない地域でも、工事の1週間前までには回るのが一般的です。標識を先に立てる決まりの区もあり、新宿区は工事開始の30日前(木造は15日前)までに標識を設置するとしています。標識が立ってから何の説明もない状態が続くと、近所の方の不安が先に立ちます。

挨拶は業者が行くのですか、それとも所有者が行くのですか?

業者が回るのが一般的ですが、要綱で説明の主体を工事の施工者と定めている区もあります。とはいえ、実家の解体では所有者や相続人が一緒に回ると受け止め方が変わります。長く住んでいた家であればなおさらです。現実的な分担は、工事の内容・期間・連絡先は業者が説明し、あいさつと事情の説明は所有者側が行う、という形です。誰が行くかは、契約のときに業者と決めておいてください。

遠方に住んでいて挨拶に行けないときは、どうすればいいですか?

手紙を使えます。要綱でも、不在などで直接説明できない場合に文書の投函を認めている運用があります。手紙に書くのは、工事の場所、期間、作業の時間帯、業者名と現場の連絡先、そして誰の家の解体なのか(差出人の続柄)です。ご自身の連絡先を載せるかは任意ですが、載せておくと苦情が業者を通さずに直接届く点は先に理解しておいてください。工事の初日か最終日にだけ行ける場合は、その日に改めて回ると印象が変わります。

工事現場に立つ標識には、何が書かれますか?

建設リサイクル法にもとづく標識と、石綿(アスベスト)の事前調査結果の掲示があります。標識には工事の名称・場所・期間、発注者と施工者の名前、分別解体の計画などが記されます。石綿については、床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事で事前調査の結果を都道府県などに報告することが必要で、調査結果は作業場所に備え付けて掲示することとされています。令和5年10月1日に着工する工事からは、この事前調査を建築物石綿含有建材調査者などの資格を持つ人が行う必要があります。

まとめ

  • 範囲には公的な目安があります。 新宿区・世田谷区とも、説明の範囲を建物の高さの2倍・30メートルを超えない範囲としていました。二階建ての木造ならおよそ12メートルです
  • 時期は自治体でばらばら。 工事開始の3日前までの区もあれば、15日前までの区もあります。まず自分の市区町村に決まりがあるかを確認してください
  • 標識のほうが先に立ちます。 近所の方は標識で先に知るので、そこから説明までの空白を長くしないことが大事です
  • 誰が回るかは、契約のときに決める。 お互いに相手が行くと思っていた、がいちばんまずい形です
  • 遠方なら手紙で。 誰の家か・期間と時間帯・業者の連絡先・お礼の4点があれば足ります
  • 石綿の調査結果は現場に掲示されます。 聞かれたときの答えになるので、内容を事前に見せてもらってください

※本記事の制度情報は2026年8月2日時点で各公式ページを確認したものです。事前周知の要綱は区市町村ごとに定められており、内容も運用も地域で異なります。工事の前に、お住まいの市区町村の担当課で最新の内容をご確認ください。

参考情報(出典)

家の補助金ナビ編集部

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