入院中に実家を直しておけるか——工事はできます。お金が出るかは「退院できたか」で決まる、という構造です
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退院の日が決まった。それまでに玄関の段差と廊下の手すりを何とかしておきたい——実際、住宅改修を調べ始めるきっかけとして、いちばん多い状況だと思います。
結論から言うと、入院中でも工事はできます。 工事のまえの申請も、着工も可能です。
ただし、ここに条件が付きます。退院・退所しなかった場合は、支給されません。
つまりこの制度は、入院中の工事について「工事は先に進めてよい。ただしお金が出るかは、退院できたかどうかで決まる」という構造をとっています。ここを知らずに着工すると、あとで想定していなかった負担が生じます。
この記事では、泉佐野市・相模原市・八王子市の公式資料(確認日2026年8月3日)で確認した内容だけで、入院と工事が重なったときの扱いを整理します。
先に結論
✓ ここが要点
入院中でも着工できます。 退院・退所の予定が決まっていることが条件です。 退院できなければ支給されません。 3市とも同じ扱いでした。工事代金は全額が自己負担になります。 着工後に入院した場合——相模原市は入院するまでに完成した部分までが対象、としています。 工事の完了前に亡くなった場合は、市で割れています。 相模原市・八王子市は完成した部分まで対象、泉佐野市は対象外。ここは自分の市を確かめる必要があります。
「入院中は対象外」と「入院中でもできる」は、同じことを言っています
調べ始めて最初に混乱するのが、ここだと思います。市の公式ページで、書き出しが正反対に見えるためです。
相模原市の公式Q&Aは、こう始まります。
入院中等の場合は、住宅改修が必要と認められないので対象になりません。
これだけ読むと、だめだと思ってしまいます。しかし同じ答えの続きに、こう書かれています。
退院および退所等の予定が明らかな場合等については、予め改修しておくことも必要と考えるため、施工前に事前申請を行い、退院・退所等の後に事後申請を行います。なお、この場合、退院・退所等しないことになった場合は対象とはなりません。
一方、泉佐野市はこう書いています。
退院・退所の予定が決まっており、住宅改修を行わなければ在宅生活に支障がでると判断できる場合は、入院・入所中においても事前申請、着工が可能です。ただし、退院・退所できない場合は、保険給付を受けることはできません。
言っている中身は同じです。 原則は対象外で、退院の予定が明らかなら例外的に進められる。八王子市も「入院・入所中で退院・退所の見込みがある場合、工事着工は可能ですが、万が一退院・退所しなかった場合は支給できません」としています。
! ここに注意
違うのは「先にどちらを言うか」だけです。相模原市は原則から、泉佐野市は例外から書いています。検索して最初に開いたページが相模原市型だと、あきらめてしまう。 ここでの実際の結論は、退院の予定が決まっているなら進められる、です。ただし判断は市区町村にありますので、着工の前にお住まいの市へ確認してください。
手続きの順番は、ふだんと少し変わります
入院中に進める場合、書類を出すタイミングがずれます。
相談
ケアマネジャーか地域包括支援センターへ。退院の予定日を伝えます
理由書の作成
住宅改修が必要な理由書を作ってもらいます
工事のまえの申請
入院中に提出できます。ここで市の承認を待ちます
着工・完成
退院までに工事を終えます
退院
ここが分かれ目です
工事のあとの申請
退院してから提出します
八王子市の手引きには、事業者向けの注意としてこう書かれています。「新規申請・区分変更中や入院中は完了届を受け付けできません。認定結果が出てから、または退院後に提出してください」。
つまり、工事が終わっても、退院するまでは手続きが完了しません。 ここが通常の流れと違うところです。
退院できなかったときに、何が起きるか
工事代金が全額、自己負担になります。20万円の工事なら、戻るはずだった18万円前後(自己負担1割の場合)が戻りません。
泉佐野市は、この点について業者側にも念を押しています。
事業者が申請を代行する場合、その旨を本人に説明し、了承を得たうえで事前申請してください。
これは読者にとって重要な一文です。この条件を説明されないまま着工が進んでしまうことがある、という前提で書かれているからです。
! ここに注意
着工の前に、家族のあいだで次の2つを確認しておいてください。①退院できなかった場合、この工事代金は全額自己負担になること。②その金額はいくらか。 手すり1本なら数万円ですが、浴室や玄関の工事が入ると20万円に届きます。工事を分けて、確実に必要な部分から先に着工するという選び方もあります。
着工後に入院・死亡したときの扱い
ここは市で扱いが割れています。整理して並べます。
| 起きたこと | 相模原市 | 八王子市 | 泉佐野市 |
|---|---|---|---|
| 着工後に入院し、退院の見通しがつかない | 入院するまでに完成した部分まで対象 | 記載を確認できず | 記載を確認できず |
| 工事の完了前に本人が死亡 | 死亡するまでに完成した部分まで対象 | 死亡時に完成している部分までが対象 | 対象外 |
| 入院中に工事が完成し、退院しないまま死亡 | 記載を確認できず | 支給できない | 対象外 |
※ 表は横にスクロールできます
同じ質問に、公式ページの答えが違います。
相模原市は「要介護者が死亡するまでに工事が完成した部分まで給付対象となります」。八王子市は「住宅改修が完了する前に利用者が死亡した場合は、死亡時に完成している部分までが支給対象となります」。
一方、泉佐野市は「対象者が工事完了前に死亡した場合は、保険給付の対象外です」と、部分での支給に触れずに書いています。
✎ 私の調査メモ
編集部が確認したのは、公式ページで公開されている3市のQ&Aと手引きです(確認日2026年8月3日)。3市を選んだ理由は、住宅改修の判定について公開の資料を持っていたためで、全国を代表するものではありません。この3市で割れているということは、ほかの市でも扱いが分かれている可能性が高い、ということです。逆に言えば、市の公式ページに書かれていなければ、窓口で聞くしかありません。
実務としては、入院や体調の急変があった時点ですぐに市の介護保険の窓口とケアマネジャーへ連絡するのが確実です。工事を止めるべきか、完成させるべきかの判断が変わります。
外泊・一時帰宅のための工事は対象外です
もう1つ、間違えやすいところがあります。
施設に入っている方が、お盆や年末に自宅へ帰るために手すりを付けたい。この場合、住宅改修は対象になりません。
相模原市はこう書いています。
施設入所者の生活の拠点は施設にあるので、住宅改修の支給対象にはなりません。介護保険の住宅改修は在宅サービスであるため、施設を退所するのではなく一時的な帰宅や外泊の場合は支給対象とはなりません。(※入院中の者の場合も同様の取り扱いとします。)
八王子市も「入院・入所中で一時帰宅のために住宅改修を行った場合も、支給対象外になります」としています。
分かれ目は、生活の拠点が家に戻るかどうかです。退所して自宅に戻るなら対象、帰るのが一時的なら対象外。なお相模原市は、短期入所(ショートステイ)も入所として扱うとしています。
また、グループホームなどの利用者が自宅へ外泊する場合についても、住民票が自宅にあり介護保険の制度上は在宅の扱いであっても、生活の実態が自宅にないことから支給対象としない、としています。
退院までの時間が足りないとき
退院の日まで日数がない、という相談は多いはずです。工事のまえの申請から承認までには時間がかかります。
このとき、選択肢は2つあります。
1つは、工事を分けることです。 介護保険の20万円は一度に使い切る必要がなく、八王子市は「合計額が20万円になるまでは、数回に分けて利用することも可能です」として、手すり5万円→段差10万円→扉5万円という例を挙げています。まず退院直後に困る場所だけを先に工事し、残りはあとから進められます。
もう1つは、工事の要らない福祉用具を先に使うことです。 床や壁に固定しない置き型の手すりやスロープは、住宅改修ではなく福祉用具の貸与や購入の対象になります。八王子市の手引きは、状況に合わせた着脱が容易という利点を挙げ、今後室内でも車いすを使うことが予測される場合は手すりが邪魔になることもあるため慎重に検討するよう案内しています。
どちらもケアマネジャーに相談できます。急いで20万円を使い切ることが、いつも最善とはかぎりません。
制度そのものの使い方は介護保険の住宅改修の使い方に、手すりの費用の目安は手すりの取り付けに補助金は出る?にまとめています。
よくある質問
入院中に住宅改修の工事をしてもいいですか?
できます。ただし条件が付きます。泉佐野市は、退院・退所の予定が決まっていて、住宅改修を行わなければ在宅生活に支障が出ると判断できる場合は、入院・入所中でも工事のまえの申請と着工が可能としています。八王子市も、退院・退所の見込みがある場合は着工可能としています。共通しているのは、退院・退所しなかった場合は支給できないという点です。工事は進められますが、費用が戻るかどうかは退院できたかで決まります。
入院中に工事をして、結局退院できなかったらどうなりますか?
支給されません。泉佐野市・相模原市・八王子市とも、退院・退所できなかった場合は保険給付を受けられないとしています。工事代金は全額が自己負担になります。泉佐野市は、業者が申請を代行する場合について、その旨を本人に説明し了承を得たうえで工事のまえの申請をするよう求めています。着工の前に、この条件を家族全員で共有しておいてください。
工事を始めたあとに本人が入院してしまいました。どうなりますか?
相模原市の公式Q&Aでは、在宅でサービスを受けていた方が着工後に急に入院し退院の見通しがつかない場合、入院するまでに工事が完成した部分までが給付対象になるとしています。全部だめになるわけではなく、完成した分で区切って計算する扱いです。ただし判断は市区町村にあり、扱いが異なる場合があります。入院が決まった時点で、すぐに市の介護保険の窓口とケアマネジャーに連絡してください。
工事が終わる前に本人が亡くなった場合はどうなりますか?
ここは市によって答えが違います。相模原市は「要介護者が死亡するまでに工事が完成した部分まで給付対象となります」、八王子市も「死亡時に完成している部分までが支給対象」としています。一方、泉佐野市は「対象者が工事完了前に死亡した場合は、保険給付の対象外です」としています。なお八王子市は、入院中に工事が完成し退院しないまま亡くなった場合は支給できない、とも書いています。お住まいの市がどちらの扱いかは、公式ページか窓口で確認してください。
施設に入っていて、自宅へ外泊するための工事は対象になりますか?
対象外です。相模原市は、施設入所者の生活の拠点は施設にあるため、自宅へ外泊する場合の自宅の改修は支給対象にならないとし、入院中の方も同様の扱いとしています。八王子市も、入院・入所中で一時帰宅のために住宅改修を行った場合は支給対象外としています。対象になるのは、施設を退所して自宅に戻る場合です。なお相模原市は、短期入所も入所として扱うとしています。
まとめ
- 入院中でも、工事のまえの申請と着工はできます。 条件は、退院・退所の予定が決まっていることです
- 退院できなければ支給されません。 工事代金は全額が自己負担になります。着工前に家族で共有してください
- 工事のあとの申請は、退院してからです。 入院中は完了届を受け付けない市があります
- 着工後の入院は、完成した部分まで。 相模原市はそう扱っています。入院が決まったらすぐ市とケアマネジャーへ連絡してください
- 完了前に亡くなった場合の扱いは、市で割れています。 相模原市・八王子市は完成部分まで対象、泉佐野市は対象外でした
- 一時帰宅・外泊のための工事は対象外です。 分かれ目は、生活の拠点が家に戻るかどうかです
- 時間が足りないときは、工事を分ける・福祉用具を先に使う。 20万円は数回に分けて使えます
※本記事の制度情報は、各市の公式資料を2026年8月3日に確認したものです。入院・死亡が重なった場合の取扱いは市区町村ごとに異なります。対象になるかどうかの最終的な判断は市区町村にあります。制度は年度や運用の見直しで変更されることがありますので、着工前に必ずお住まいの市区町村の公式ページ・窓口でご確認ください。
参考情報(出典)
- 介護保険住宅改修 Q&A 泉佐野市版(泉佐野市)(確認日 2026-08-03)
- 介護保険 住宅改修のQ&A 令和6年4月改定版(相模原市)(確認日 2026-08-03)
- 介護保険・高齢者自立支援 住宅改修の手引き(八王子市 福祉部介護保険課)(確認日 2026-08-03)
- 制度の全体像=介護保険の住宅改修の使い方/お住まいの市の上乗せ=市区町村別の介護リフォームのページ
家の補助金ナビ編集部
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