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がけ地近接等危険住宅移転事業——除却費の上限97万5,000円は国が決めた額です。ただし空き家の解体には使えません

公開 2026年8月11日最終更新 2026年8月11日執筆 家の補助金ナビ編集部

国土交通省が示している除却等費の限度額は、1戸あたり975千円です。97万5,000円のことです。この数字を、そのまま自分の市の上限として公表している市区町村があります。

当サイトが解体と外壁塗装の補助を調べた298市区町村のうち、がけ地近接等危険住宅移転事業に触れているのは14市。そのうち登米市と浜田市は、除却費の上限を97万5,000円と公表していました。国が決めた限度額が、そのまま市の額になっているということです。

ただし、この事業は名前から想像するよりずっと狭い制度です。危険な場所にある家を直すための補助ではなく、そこに今住んでいる方が別の場所へ移るための補助で、空き家の解体には使えません。

この記事では、国土交通省の事業概要とQ&A、北九州市の公式ページで、対象になる区域・住宅・人、金額の中身、使えない場合を整理します。

先に結論

✓ ここが要点

  • この事業は移るための補助で、直すための補助ではありません。擁壁の工事費は対象に入りません
  • 補助は除却等費(実費・限度額975千円/戸)と建物助成費(借入の利息相当額)の2本立て
  • 対象は今そこに住んでいる方。空き家になった実家を別居の子が解体する場合は対象外です
  • 同じ敷地での建て替え・改修も対象外です(別の事業の案内があります)
  • 交付決定(=市が補助を出すと決めて通知すること)より前に着手すると使えません。窓口は市町村です

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お住まいの市区町村で使えるかは、郵便番号だけで確認できます

市区町村の制度と国の制度を1画面にまとめて表示します。外壁・外構・解体・介護など、工事の種類を切り替えて確認することもできます。

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公式ページで確認した情報のみ(各項目に確認日つき)

「直す」ではなく「移る」ための補助です

国土交通省は、この事業の目的をこう説明しています。がけ崩れ・土石流・雪崩・地すべり・津波・高潮・出水などの危険から住民の生命の安全を確保するため、災害危険区域等の区域内にある既存不適格住宅等の移転に対して支援を行う——支援するのは移転です。

補助の対象は2つに分かれます。ひとつめが除却等費。

○危険住宅の除去などに要する費用で除却費、引越費用(動産移転費、仮住居費等)、 その他(限度額:975千円/戸)

ふたつめが建物助成費です。

○危険住宅に代わる新たな住宅の建設(購入を含む。)及び改修のため、 金融機関等から融資を受けた場合の利息に相当する額(借入利率:年8.5%を限度)

限度額はこうです。

限度額:【通 常】 4,210千円/戸 (建物3,250千円/戸、土地960千円/戸)

特殊土壌地帯・地震防災対策強化地域・保全人家10戸未満の急傾斜地崩壊危険区域・出水による災害危険区域などの特殊地域では、7,318千円まで上がり、敷地造成の分(608千円)も加わります。

お金の出どころは折半です。

国:1/2、地方公共団体:1/2

事業を実施するのは市町村(市町村が事業主体となりがたい事情がある場合は都道府県)です。国の制度だからといって国に申し込むわけではなく、窓口は市区町村になります。

要綱は2つあり、いま国費の根拠になっているのは新しいほうです

この事業を要綱で調べると、名前の違う2つに行き当たります。ひとつが平成7年4月1日決定のがけ地近接等危険住宅移転事業制度要綱、もうひとつが社会資本整備総合交付金交付要綱です。どちらを見るかで答えが変わる場面があります。

国土交通省のQ&Aは、市町村の事業へ国費を出す条件として県の補助が要るかという質問に、こう答えています。

市町村事業に国費補助を行う条件として都道府県補助は要件としていない。

そのうえで注記が付いています。平成7年の制度要綱の運用細則には、市町村が事業主体の場合、都道府県が対象経費の4分の1以上を補助する場合に限って国の補助を行う、という定めがありました。しかし、いま国費の根拠になっている社会資本整備総合交付金交付要綱には、その運用細則が置かれていません。

社会資本整備総合交付金交付要綱に当該運用細則は設けられていない。

古い要綱の条件を読んで、県が上乗せしていないから使えない、と判断しないでください。 実際の金額・様式・受付期間は、お住まいの市が定めた要綱で決まります。市のサイトで要綱のPDFを探すのが、いちばん確実です。

対象になる区域は7つあります

区域の指定は、この事業のいちばん硬い条件です。国土交通省の資料が挙げているのは次の7つです。

# 区域 根拠
1 地方公共団体が条例で指定した災害危険区域 建築基準法第39条第1項
2 地方公共団体が条例で建築を制限している区域 建築基準法第40条
3 都道府県知事が指定した土砂災害特別警戒区域 土砂災害防止法第9条
4 土砂災害特別警戒区域への指定が見込まれる区域 土砂災害防止法第4条
5 都道府県知事が指定した浸水被害防止区域 特定都市河川浸水被害対策法第56条第1項
6 地区計画(浸水被害に関する建築制限を定めているもの)の区域 都市計画法第12条の4
7 過去3年間に災害救助法の適用を受けた地域 災害救助法第2条

※ 表は横にスクロールできます

いわゆる「がけ地」だけでなく、浸水のほうも入っているのが見落とされやすいところです。2の建築を制限している区域は、各県の建築基準法施行条例のいわゆるがけ条例で定められた範囲を指します。

そのうえで、住宅の側の条件が付きます。

がけ地の崩落等の災害による危険が著しい区域に存する住宅で当該区域の指定等により建 築制限の基準等に適合しないこととなったもの※1もしくは、建築後の災害により安全上・生 活上の支障が生じた住宅※2を対象としている。

区域が指定される前から建っていて、指定によって基準に合わなくなった住宅——既存不適格の住宅です。あとから建てた住宅は当たりません。7つめの災害救助法の地域については、区域に入っているだけでは足りず、移転勧告・是正勧告・避難指示などを受けた住宅が対象になります。

住宅の使い方にも線があります。

「居住の用に供する 部分の床面積が延べ面積の1/2未満のもの」は対象としない

店舗のほうが広い建物は外れる、ということです。

空き家の解体には使えません

ここがこの制度でいちばん誤解されやすいところです。国土交通省のQ&Aは、危険住宅に居住していた母親が亡くなり、別の住宅に住んでいる子が危険住宅を除却する場合について、こう答えています。

事業の対象となるのは現に危険住宅に居住している者が移転を実施する場合であり、質問 にあるような場合は事業の対象とならない。

今そこに住んでいる方が引っ越す形でなければ当たりません。 住民票の有無だけで機械的に決めるわけではないとも書かれています。

住民票の有無のみを居住確認の要件とはしていない。危険住宅住所地に住民票がないこと だけで事業の対象外とする必要はないが、事業主体において適切に居住の実態を把握され たい。

住んでいる実態を市が見る、という書き方です。裏を返すと、何年も空き家のままの実家は対象になりません。

このずれは、市区町村の説明にも表れています。当サイトが解体補助を調べた記録の中で、登米市はこう説明していました。土砂災害特別警戒区域などにある危険な住宅を安全な場所へ移す場合に限られる制度で、一般的な空き家や老朽住宅の解体には使えない——解体補助を探しに来た人に対して、この事業の名前を出しつつ、使えないと断っているわけです。いわき市・総社市・合志市も同じ書き方でした。

一方で、浜田市のように、区域内であれば解体のみでも使える別制度として案内している市もあります。同市の空き家除却補助の上限より、この事業の除却費の上限のほうが高いためです。自分の家が指定区域の中にあるかどうかで、話が変わります。

空き家の解体費用への補助は、市区町村が空き家対策として別に設けているものです。お住まいの市に制度があるかは市区町村別の解体補助DBで確認できます。全国の分布は空き家解体補助金の全国調査にまとめました。

なお、移転する場合でも元の家は残せません。

原則として除却が必要である。元の居住者が移転した後に、危険住宅を貸家にするなどし て、再度の居住が発生することを防ぐためである。

跡地の使い方についても、Q&Aは踏み込んでいます。

移転事業実施後の危険住宅除却跡地に再び住宅が建てられることは、移転 支援事業の主旨からみて問題であり、宅地以外の土地利用とする場合に限って実施するよ う、取り計らわれたい。

移転したあとの土地に、また家を建てる前提では組み立てられていません。 売却して第三者が家を建てる場合も同じ扱いです。ただし、擁壁の工事などで土砂災害特別警戒区域の指定そのものが解除される場合は、この限りではないとされています。

同じ場所で直す場合は、別の事業です

移転が目的の制度なので、その場で直す形は入りません。

補助対象とできない。本事業は安全な地域へ移転するための助成を行う制度であるため、 移転元の同一地内での建替えや改修により構造規制に適合させる場合は原則として本事 業の補助の対象とならない。

Q&Aはこのあと、同じ敷地内で改修する場合は住宅・建築物耐震改修事業のメニューにある住宅・建築物の土砂災害対策改修に関する事業を検討するよう案内し、同じ敷地内の建て替えへの支援は、いずれの事業でも対応していないと書いています。今住んでいる危険住宅の改修が対象かという質問にも、対象ではないと答えています。

その通りである。本件事業は被災の危険のある土地から、別地において居住を行うにあた り危険住宅に代わる住宅に対して補助を行うものである。

移転先についても線が引かれています。

移転先地は移転元地の地区要件に該当しない土地である必要があり、 当該区域における構造基準に適合するように地盤嵩上げや改修を行ったとしても不可。

同じ区域の中で条件を満たすように直しても、移転したことにはならないということです。擁壁そのものを直す費用は、市区町村が独自に助成を置いていることがあります(擁壁の補助金)。

建物助成費は、現金ではなく利息相当額です

金額の大きいほうの建物助成費は、性格を取り違えやすいところです。

なお本事業は利子補給を行うものではなく金融機関等から融資を受けた場合の利息に相 当する額の助成を行うものであることから融資契約の時期は事業着手の時点とは直接関係 していない。

融資を受けていなければ、この分の補助は付きません。 借入利率は年8.5%が限度で、変動金利でも融資契約当初時点の店頭金利で利息総額を計算するとされています。建売住宅を買う場合は、契約書で建物分と土地分が判別できることが条件です。高齢で融資契約ができない場合に子が名義人になった借入も、関係が確認できれば対象になり得ます。

除却等費のほうは実費に対する助成なので、性格が違います。同じ工事でも、どちらに分類するかで補助額が変わることがある、とQ&Aは注意しています。

借家の場合も、条件付きで対象になり得ます。

①借家所有者が危険住宅の除却に同意し、履行することが明らかになっていること ②借家所有者が当該地に、住宅を再建築しないことに同意していること ③除却工事の負担、方法等について所有者と居住者の間で調整がなされていること

この3つを前提に、居住者へは建物助成費と引越費用等を、借家所有者へは除却に要する費用を補助できるとされています。ただし企業の社宅などは原則として対象外です。

北九州市の実装=金額は国の限度額のまま、支払い方に工夫があります

実際に市がどう作っているかを、北九州市の例で見ます。同市は平成26年3月1日から事業を始め、平成30年度に対象区域を、平成31年度に対象住宅を広げてきました。

対象事業 対象経費 補助金額の上限
危険住宅除却等事業 危険住宅の除却・動産移転・跡地整備・仮住居費 97万5千円/戸
代替住宅建設等事業 移転先住宅の資金を借入れた場合の利子相当額 421万円/戸(建物325万円・土地の取得96万円)

※ 表は横にスクロールできます

どちらも国の限度額と同じ数字です。 975千円と4,210千円が、そのまま97万5千円と421万円になっています。共同住宅・長屋の場合は1棟あたりの上限になる、という注記が付きます。

実施の形は2通りで、除却だけを行うか、除却と代替住宅の建設等を両方行うかです。

本事業の実施方法は、2つあります。危険住宅の除却は必須です。

もうひとつ、支払いの流れに工夫があります。

この制度を利用することにより、補助申請者は工事費等と補助金の差額分のみ資金準備すればよいこととなり、当初の費用負担が軽減されます。

代理受領制度です。施工業者などが申請者の委任を受けて補助金を代わりに受け取る仕組みで、いったん全額を立て替える必要がなくなります。ただし範囲が限られます。

がけ地近接等危険区域等危険住宅移転事業では、危険住宅除却等事業のみ「代理受領制度」をご利用できます。

利息相当額のほうには使えません。 利用するには申請者と施工業者の両方の合意による届出が要ります。

着手したあとでは、原則として使えません

最後に、順番です。国土交通省のQ&Aは、除却工事や移転先住宅の建設工事に着手済みの場合を原則不可とし、理由をこう説明しています。

本事業の施策目的は補助金によるインセンティブ付与により危険住宅からの移転を促し、 安全性の確保を図るものであることから、交付決定前に施策の目的が達成されており、これ にあらためてインセンティブ付与のための公的支援を行うことの合理的説明が困難なため 事業の対象外となる。

事業が始まるのは、市町村へ申請して交付決定を受けた時点です。土地の売買契約や住宅の建築契約は、そのあとになります。市の側も同じことを書いています。

既に危険住宅の解体工事等、事業に着手している場合は補助の対象となりません。

! ここに注意

北九州市は令和8年度の募集を4月13日から先着順で受け付け、予算上限に達し次第終了すると案内しています。申請の前に必ず担当課へ相談するようにも書かれています。区域の指定、住宅が既存不適格かどうか、居住の実態——確かめる項目が多い制度なので、引っ越しの計画を立てる前に窓口へ行ってください。 区域に入っているかどうかは都道府県の砂防担当課で確認できます。

よくある質問

がけ地近接等危険住宅移転事業では、いくら補助されますか?

補助は2本立てです。危険住宅の除却などに要する費用(除却費・引越費用・仮住居費など)は、国土交通省の資料で限度額が1戸あたり975千円と示されています。移転先の住宅を建てたり買ったりするために金融機関などから資金を借りた場合は、その利息に相当する額が補助され、限度額は通常が1戸あたり4,210千円(建物3,250千円、土地960千円)です。特殊土壌地帯などの特殊地域では7,318千円まで上がり、敷地造成の分も加わります。実際に申し込む窓口は市町村なので、市が国の限度額どおりに設定しているかは、その市の要綱で確認してください。

空き家になった実家を解体するのに使えますか?

使えません。国土交通省のQ&Aは、危険住宅に居住していた母親が亡くなり、別の住宅に住んでいる子が危険住宅を除却する場合について、事業の対象となるのは現に危険住宅に居住している者が移転を実施する場合なので対象とならない、と答えています。この事業は住んでいる方の生命の安全を確保するために移転を促すものなので、すでに誰も住んでいない家には当たりません。空き家の解体費用への補助は、市区町村が空き家対策として別に設けているものになります。お住まいの市に解体の補助があるかは、市区町村別の解体補助DBで確認できます。

同じ場所で建て替えたり、擁壁を直したりする場合は対象になりますか?

対象になりません。国土交通省のQ&Aは、土砂災害特別警戒区域の構造規制に適合させるために同じ敷地で建て替える場合について、本事業は安全な地域へ移転するための助成なので補助の対象とならないと答えています。同じ敷地で改修する場合については、住宅・建築物耐震改修事業のメニューにある住宅・建築物の土砂災害対策改修に関する事業を検討するよう案内しています。同じ敷地内の建て替えへの支援は、いずれの事業でも対応していないとも書かれています。擁壁そのものを直す費用については、市区町村が独自に助成を置いていることがあります。

建物助成費は、現金でもらえるのですか?

借入の利息に相当する額の補助です。国土交通省の資料は、危険住宅に代わる新たな住宅の建設や購入・改修のために金融機関などから融資を受けた場合の、利息に相当する額を補助対象としています。借入利率は年8.5%が限度です。Q&Aは、この事業は利子補給を行うものではなく利息に相当する額の助成を行うものだとしています。つまり住宅を現金で買った場合には、この分の補助は付きません。除却等費のほうは実費に対する助成なので、性格が違います。

借家に住んでいる場合も対象になりますか?

条件付きで対象になり得ます。国土交通省のQ&Aは、借家所有者が危険住宅の除却に同意して履行することが明らかであること、借家所有者がその土地に住宅を再建築しないことに同意していること、除却工事の負担や方法について所有者と居住者の間で調整がなされていること、の3つを前提に、居住者へは建物助成費と引越費用等を、借家所有者へは除却に要する費用を補助することが可能だとしています。ただし企業の社宅など、所有者への補助の対象として適当でない場合は原則として対象外とされています。

先に解体してから申請することはできますか?

できません。国土交通省のQ&Aは、危険住宅の除却工事や移転先住宅の建設工事に着手済みの場合について原則として不可とし、理由として、交付決定の前にすでに目的が達成されているのに改めて公的支援を行う合理的な説明が困難であることを挙げています。事業は市町村へ申請して交付決定を受けたところから始まり、土地の売買契約や住宅の建築契約はその後になります。北九州市も、既に危険住宅の解体工事等に着手している場合は補助の対象とならないと明記しています。まず市の窓口へ相談してください。

まとめ

  • この事業は移転のための補助です。擁壁の工事費や、住み続けるための改修費は入りません
  • 補助は除却等費(実費・限度額975千円/戸)と建物助成費(借入の利息相当額)の2本立て
  • 対象は今そこに住んでいる方。空き家になった実家を別居の子が解体する形は当たりません
  • 対象区域は7つ。がけ地だけでなく浸水の区域も入っています
  • 同じ敷地での建て替え・改修は対象外で、別の事業が案内されています
  • 要綱は2つあり、いま国費の根拠は社会資本整備総合交付金交付要綱です。金額と様式は市の要綱で決まります
  • 交付決定より前に着手すると使えません。 窓口は市区町村です
  • 北九州市は国の限度額をそのまま採り、除却のほうにだけ代理受領制度を用意しています

擁壁そのものを直す補助については擁壁の補助金に、擁壁を造るときの手続きは擁壁の確認申請にまとめています。

※本記事の制度情報は2026年8月11日時点で、国土交通省の公表資料と北九州市の公式ページを確認したものです。市区町村ごとに要綱の内容や受付期間が異なります。移転や解体の契約の前に、お住まいの市の担当窓口にご確認ください。

参考情報(出典)

家の補助金ナビ編集部

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