頼むまえに

解体工事の契約書——ひな形は決まっていません。法律が決めているのは、書くべき中身と、契約の前後の順番です

公開 2026年8月11日最終更新 2026年8月11日執筆 家の補助金ナビ編集部

建設業法は、解体工事の契約書に書くことを16項目まで決めています。ところが、その16項目をどう並べるかという様式のほうは決めていません

「解体工事 契約書 ひな形」で探しても、公式のダウンロード先が見つからないのはそのためです。

見積もりが決まって、業者から契約書の案が出てきた。あるいは「うちは注文書だけで大丈夫です」と言われた——どちらの場合も、確かめる先は書式ではなく中身です。

結論から言うと、確かめることは3つあります。中身が法律の項目を満たしているか契約のまえに書面での説明を受けたか、そして印紙をどちらが負担するか。あわせて、契約を結ぶ日にも法律で決まった制約があります。この記事では、法律の原文と国土交通省・国税庁の公式情報で、順に見ていきます。

先に結論

✓ ここが要点

様式は決まっていません — 国土交通省の質疑応答集も、契約書面の様式は定められていないとしています。決まっているのは書くべき中身のほうです

中身は16項目+4項目です — 建設業法第19条第1項の16項目に、解体では分別解体等の方法解体工事に要する費用などが上乗せされます

印紙の額は契約金額で決まります — 建設工事の請負契約書は令和9年3月31日までの軽減措置の対象で、貼る人を法律は決めていません。負担は契約のときに決める話になります

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様式は決まっていません。決まっているのは中身です

まず、いちばん探されている「ひな形」から片づけます。

国土交通省の建設リサイクル法 質疑応答集(案)は、契約書面の様式についてこう答えています。

定められていない。建設業法第19条第1項で定められている事項及び以下の事項が記載されていればよい。

つまり、書式ではなく中身で判定されるということです。

雛形そのものが見たい場合は、公的なものが1つあります。建設業法にもとづく中央建設業審議会が、契約書のひな型にあたる標準約款を作っています。

中建審は、昭和24年発足以来、標準約款に関しては、公共工事用として公共工事標準請負契約約款、民間工事用として民間建設工事標準請負契約約款(甲)及び(乙)並びに下請工事用として建設工事標準下請契約約款を作成し、実施を勧告しています。

個人が家の解体を頼む場合に近いのは、民間建設工事標準請負契約約款の(乙)=小規模な工事向けのものです。国土交通省の建設工事標準請負契約約款のページから本文を読めます(令和7年12月2日改正・同年12月12日から施行)。

ただし、これは業者に「この約款で契約してください」と求めるためのものではありません。手元の契約書と読み比べて、抜けている項目を見つけるための物差しとして使うのが現実的です。では、その中身は何か。

建設業法が決めている16項目

建設業法第19条第1項は、こう定めています。

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

続く号に並ぶのが、その16項目です。解体を頼む側の目線でとくに効くものを挙げます。

中身 解体でここが効く
一・二 工事内容/請負代金の額 どこまで壊すのか。基礎・土間・ブロック塀・庭木を含むか
工事着手の時期と完成の時期 更地の引き渡し日が決まる
前払や出来形払の定めをするときの時期と方法 着手金の有無
設計変更・着手の延期・中止があった場合の工期や代金の変更 地中から物が出たときの扱い
天災その他不可抗力による工期の変更や損害の負担 台風・大雪で止まったとき
工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担 隣家の壁・車の傷
十四 履行の遅滞その他債務の不履行の場合の遅延利息・違約金 引き渡しが遅れたとき
十五 契約に関する紛争の解決方法 揉めたときの進め方

※ 表は横にスクロールできます

九号と十四号は、契約の段階では自分に関係ないと感じやすい項目です。ただ、解体は隣の家との距離が近い工事です。塀や外壁、駐車中の車に何かあったときに誰がどう負担するのかは、始まる前に決まっていたほうが早く収まります。

解体だから上乗せされる4つ

解体工事には、建設リサイクル法の上乗せがあります。同法第13条第1項です。

建設業法(昭和二十四年法律第百号)第十九条第一項に定めるもののほか、分別解体等の方法、解体工事に要する費用その他の主務省令で定める事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

具体的に何を書くのかは、さきほどの質疑応答集が4つ挙げています。

  • 分別解体等の方法
  • 解体工事に要する費用
  • 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
  • 再資源化等に要する費用

3つ目が、頼む側にとっていちばん実用的です。 廃材をどこへ持っていくのかが、施設の名前と住所で契約書に書かれます。処分先が書かれていない契約書は、この項目が抜けていることになります。

✎ 私の調査メモ

編集部で確認したこと:建設業法第19条と建設リサイクル法第12条・第13条・第18条・第21条の条文は、e-Gov法令検索の法令APIで原文を取得しました。契約書面の様式と記載事項については、国土交通省建設業課の建設リサイクル法 質疑応答集(案)のQ71・Q77・Q50・Q51を原文で確認しています(確認日 2026-08-11)。

契約のまえに、業者から書面で説明を受けます

ここが、順番の話でいちばん知られていないところです。

建設リサイクル法第12条第1項は、工事を請け負おうとする業者に対して、契約より前の説明を義務づけています。

対象建設工事(他の者から請け負ったものを除く。次項において同じ。)を発注しようとする者から直接当該工事を請け負おうとする建設業を営む者は、当該発注しようとする者に対し、少なくとも第十条第一項第一号から第五号までに掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。

質疑応答集も、時点をはっきり書いています。

法第12条第1項では「対象建設工事を発注しようとする者」に対し、「直接当該工事を請け負おうとする建設業を営む者」から説明することとなっており、契約前に説明することが求められている。

国土交通省の案内は、この流れを4つの段に整理しています。

①説明・・・受注者は発注者に対し、分別解体等の計画等について書面を交付して説明しなければなりません。②契約・・・発注者が受注者とかわす契約書面においては分別解体等を明記する必要があります。

説明が先、契約が後。 この説明の書面には、解体する建物の構造、着手の時期と工程の概要、分別解体の計画、建設資材の量の見込みが入ります。見積書とは別のものです。

もし契約の場でこの書面が出てこなければ、「分別解体の説明の書面をください」と聞けば通じます。

なお、この説明と契約の義務がかかるのは、床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事です。この規模の考え方は建設リサイクル法施行令第2条第1項に書かれています。80平方メートルはおよそ24坪。延べ床30坪の家なら約99平方メートルで、この線を超えます。

同じ80平方メートルという数字がアスベストの話にも出てきますが、あちらは調査の基準ではなく報告の基準で、別の法律の話です。混ざりやすいので、家の解体とアスベスト事前調査——「80㎡未満なら不要」は誤解ですで分けて整理しています。

印紙はいくら、誰が貼るのか

解体工事の契約書は、印紙税でいう第2号文書(請負に関する契約書)に当たります。

そして建設工事の請負契約書には、軽減措置があります。国税庁の説明です。

平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される、次の2種類の契約書について印紙税の税額が軽減されます。

軽減の対象は、契約金額が100万円を超えるものです。金額別に並べると、こうなります。

契約金額 軽減後の税額 軽減がない場合
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上100万円以下 対象外 200円
100万円超 200万円以下 200円 400円
200万円超 300万円以下 500円 1千円
300万円超 500万円以下 1千円 2千円

※ 表は横にスクロールできます

当サイトの家の解体費用はいくら?30坪・40坪・50坪・60坪の早見表では、木造の目安を坪4〜5万円としています。30坪なら120万〜150万円で、この帯の印紙は200円。50坪の200万〜250万円なら500円です。契約書を2通作れば、それぞれに要ります。

誰が貼るのかは、法律が決めていません

よく聞かれるのがここです。印紙税法第3条第2項は、こう定めています。

一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。

連帯して、です。 どちらか一方に押しつける決まりはありません。だからこそ、誰がいくら負担するのかは契約のときに決める話になります。見積書に「印紙代」の行があるかどうかを見ておくと、話が早く済みます。

なお、注文書と請書で済ませる形でも、請書は請負に関する契約書に当たります。国税庁は第2号文書の具体例として工事注文請書を挙げています。紙を減らせば印紙が要らなくなる、という話ではありません。

契約書がないまま進みそうなとき

「口約束で始めましょう」「注文書だけで大丈夫です」と言われることがあります。

さきほど引いたとおり、建設業法第19条第1項は書面の相互交付を求めています。書面を交わさない進め方は、この規定に沿っていません。

そして実務の面でも、困るのは頼んだ側です。追加の費用を請求されたとき、工期が延びたとき、隣家との間で何か起きたとき——何を約束したのかを示すものが残りません

応じてもらえない場合の窓口があります。

駆け込みホットラインでは、建設業法違反に関する情報について、匿名性に留意したうえで建設Gメン調査等の端緒情報、許可行政庁への情報提供として利用しております。

国土交通省の建設業法違反の情報提供窓口です。電話とフォームの両方があり、電話は0570-018-240、受付は平日の10時から12時と13時30分から17時です(確認日 2026-08-11)。

! ここに注意

契約書がないことより先に困るのは、追加請求の根拠が確かめられなくなることです。地中から古い基礎やコンクリートの塊が出てくると、その撤去のぶんが後から請求されます。建設業法第19条第1項第六号は、設計変更や中止があったときの代金の変更と、その額の算定方法を契約書に書くこととしています。ここが書かれていれば、追加請求が出たときに契約書と照らして確かめられます。

契約を急がせる日程には、理由があります

「今週中に契約を」と言われて戸惑うことがあります。急かされているのか、それとも日程上の理由があるのか。実は、日程のほうに法律で決まった制約があります。

床面積80平方メートル以上の解体工事には、都道府県知事への届出が要ります。この届出は、契約より後でないと出せません。

契約を締結していない段階では元請業者は存在しないので、元請業者について記載することができない。このため、工事の契約前に届出書を提出することができない。

そして届出は、着手の7日前までです。着工日を決めた時点で、契約の期限は自動的に決まります。

なお、ここでいう着手がいつを指すのかも、質疑応答集に答えがあります。

実際に現場で新築・解体等の工事を始める日(新築・解体等の工事のための仮設が必要な場合は仮設工事を始める日)である。現場での除草などの準備工事については、工事着手に含まなくてもよい。

足場や養生シートを立てる日が着手日になる、ということです。重機が入る日ではありません。

届出そのものの義務者や、補助金・登記との前後関係は実家を解体するまえにやること——順番を戻せない3つと、そのほかの段取りにまとめています。

もうひとつ、契約書とセットで押さえておくと得なのが、工事のあとの報告です。建設リサイクル法第18条第1項は、こう定めています。

対象建設工事の元請業者は、当該工事に係る特定建設資材廃棄物の再資源化等が完了したときは、主務省令で定めるところにより、その旨を当該工事の発注者に書面で報告するとともに、当該再資源化等の実施状況に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。

廃材をどう処理したかの報告を、書面で受け取る権利があります。 報告書に載るのは、再資源化等が完了した年月日、処理をした施設の名称と所在地、そして要した費用です。契約書に書かれた処分先と、報告書に書かれた処分先が一致しているかを見比べられます。

業者選び(許可と登録の確かめ方)

契約書の中身を整える前に、相手が解体工事をしてよい業者かどうかという段があります。

建設リサイクル法第21条第1項は、こう定めています。

解体工事業を営もうとする者(建設業法別表第一の下欄に掲げる土木工事業、建築工事業又は解体工事業に係る同法第三条第一項の許可を受けた者を除く。)は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

読み解くと、解体を請け負う業者は建設業の許可を持っているか、都道府県の解体工事業登録を受けているかのどちらかでなければなりません。金額が小さい工事だから何も要らない、ということにはならない仕組みです。登録は5年ごとの更新制なので、期限が切れていないかも合わせて聞けます。

見積もりの段階で確かめるのは、この3つです。

✓ ここが要点

許可か登録の番号はあるか — 建設業許可(解体工事業)の番号か、解体工事業登録の番号。見積書や名刺に書かれていなければ、番号を聞いて確かめてください

契約前の説明の書面は出るか — 分別解体の計画を書いた書面。法律で求められているものです

印紙と届出は、どちらが持つか — 印紙代の負担と、届出を誰が出すか。契約の場ではなく見積もりの段階で聞いておくと、日程が読めます

そのうえで、金額と条件を並べて比べます。解体は同じ家でも見積もりの幅が出やすい工事です。項目の立て方が業者ごとに違うため、総額だけを見比べると中身が噛み合いません。

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よくある質問

解体工事の契約書に、決まったひな形はありますか?

法律で決められた様式はありません。国土交通省の建設リサイクル法 質疑応答集(案)は、契約書面の様式について「定められていない。建設業法第19条第1項で定められている事項及び以下の事項が記載されていればよい。」としています。ひな形を探すより、手元の契約書にその中身が入っているかを見るほうが確実です。書式そのものを見たい場合は、中央建設業審議会が民間工事用に作っている民間建設工事標準請負契約約款(甲)・(乙)が公開されています。

解体工事の契約書に貼る印紙はいくらですか?

契約書に書かれた金額で決まります。建設工事の請負契約書は印紙税の軽減措置の対象で、国税庁によると平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作られたもののうち契約金額100万円を超えるものが対象です。軽減後の税額は、100万円を超え200万円以下なら200円、200万円を超え300万円以下なら500円、300万円を超え500万円以下なら1千円です。100万円以下の契約書は軽減の対象外で、税額は200円になります。当サイトの試算では木造30坪で120万〜150万円、50坪で200万〜250万円なので、この帯にあたるのは200円か500円の印紙です。

印紙は、頼んだ側と業者のどちらが貼るのですか?

法律は片方に決めていません。印紙税法第3条第2項は、一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には連帯して納める義務があるとしています。つまり、どちらが貼っても法律上は納めたことになります。実際には、契約書を2通作ってお互いが1通ずつ保管し、それぞれが自分の保管するぶんの印紙を負担する形か、業者がまとめて負担する形が使われます。どちらにするかは契約のときに決める話なので、見積もりの段階で確かめておくと後で揉めません。

契約書を作らないまま工事が始まりそうです。問題ありませんか?

建設業法第19条第1項は、請負契約の当事者が契約の締結に際して決められた事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないと定めています。書面を交わさない進め方は、この規定に沿っていません。金額の変更や追加の費用が出たときに、何を約束したのかを示すものが残らないという実務上の不利益もあります。応じてもらえない場合は、国土交通省の駆け込みホットラインが建設業法違反に関する情報の窓口になっています。

契約と工事の届出は、どちらが先ですか?

契約が先です。床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事は、工事を頼んだ人が着手の7日前までに都道府県知事へ届け出ることになっていますが、国土交通省の質疑応答集は、契約前は元請業者が存在しないため「工事の契約前に届出書を提出することができない。」としています。契約→届出→着工の順で、しかも届出から着工まで7日空きます。着工日から逆算すると、契約はその7日前よりさらに前に済ませておく必要があります。

まとめ

  • ひな形は決まっていません。 国土交通省の質疑応答集も、契約書面の様式は定められていないとしています
  • 決まっているのは中身です。 建設業法第19条第1項の16項目に、解体では分別解体等の方法・解体工事に要する費用・処分先の施設名と所在地・再資源化等に要する費用が上乗せされます
  • 説明が先、契約が後。 分別解体の計画は、契約のまえに書面で説明を受けることになっています
  • 契約が先、届出が後。 届出は契約前には出せず、しかも着手の7日前までです
  • 印紙の額は契約金額で決まります。 令和9年3月31日までの軽減措置の対象で、負担する人を法律は決めていません
  • 相手には許可か登録が要ります。 建設業許可(解体工事業)か、都道府県の解体工事業登録のどちらかです
  • 工事のあとは書面の報告を受け取れます。 処分した施設の名称・所在地・費用が載ります

契約書の中身が整うと、地中から物が出たときや工期が延びたときの話が、感情ではなく条文で進みます。契約の場で決めきれなかった項目があれば、着工までに書面で足しておくのが確実です。

※本記事の制度情報は2026年8月11日時点で、e-Gov法令検索の原文と国土交通省・国税庁の公式ページを確認したものです。税額や制度の内容は改正されることがあります。印紙税の個別の判断は税務署に、契約の内容についてのご相談は建設業の許可行政庁の窓口にご確認ください。

参考情報(出典)

家の補助金ナビ編集部

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