家の解体とアスベスト事前調査——「80㎡未満なら不要」は誤解です。調査はどの家でも必要で、費用は頼んだ人が負担します
解体の見積もりを取ったら、「アスベスト事前調査費」という行があって手が止まる。あるいは逆に、知人から「80㎡未満の家なら調査はいらないらしい」と聞いた——。
このどちらも、同じ誤解につながっています。
結論から言うと、アスベスト(石綿)の事前調査は、規模や築年数にかかわらず、すべての解体工事で必要です。80㎡という数字は「調査がいるかどうか」ではなく、調査の結果を行政に報告する義務の基準です。
そして、あまり知られていないことがもう1つ。調査の費用は工事を頼んだ人が負担すると、法律にはっきり書かれています。見積もりにその行があるのは、正当なのです。
この記事では、法律の原文と環境省・厚生労働省・国土交通省の公式情報で、「どの家に・何が・いくらで」を整理します。
先に結論
✓ ここが要点
調査はどの解体でも必要です — 規模の大小を問いません。80㎡(解体部分の床面積)は行政への報告義務の基準で、調査そのものの基準ではありません
費用は頼んだ人の負担です — 大気汚染防止法第18条の15第2項が、発注者(=工事を頼んだ人)が調査費用を適正に負担することを定めています
2006年9月1日以降に着工した家は軽く済みます — 着工日を書面で確認する方法で調査を終えられます。建築確認済証などの書類を探しておくのが、いちばん確実な節約です
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「80㎡未満なら不要」は、調査と報告の混同です
まず、いちばん多い誤解をほどきます。
厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトは、工事の元請業者(=工事全体を請け負う業者)向けにこう書いています。
解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無の事前調査を行う必要があります。
調査そのものに、面積の下限はありません。 平屋の小さな物置の解体でも、調査は要ります。
では80㎡は何の数字か。環境省の案内では、調査結果を都道府県などへ報告しなければならない工事が、次のように決められています。
①建築物を解体する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上であるもの②建築物を改造し、又は補修する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の請負代金の合計額※2が100万円以上であるもの
延べ床30坪の家なら約99㎡。80㎡を超えるので、この報告対象に入ります。業者に頼む工事では、報告は元請業者が「石綿事前調査結果報告システム」という国の電子システムで行うもので、住む人・頼んだ人がやることはありません。報告をしなかったり、うその報告をしたりした場合の罰則(30万円以下の罰金・大気汚染防止法第35条)も、義務を負う業者側の話です。
つまり読者のみなさんに関係するのは、報告ではなく——次の「費用」です。
調査の費用は、誰が払うのか
見積もりの「事前調査費」の行を見て、「これは業者の義務なのだから、業者持ちではないのか」と感じる方は少なくありません。
ここは法律に直接の答えがあります。大気汚染防止法第18条の15第2項です。
解体等工事の発注者は、当該解体等工事の元請業者が行う前項の規定による調査に要する費用を適正に負担することその他当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力しなければならない。
調査を行う義務は元請業者に、その費用の負担は発注者(=工事を頼んだ人)に、と役割が分かれています。見積もりに調査費が載っているのは、この条文どおりの正当な請求です。
むしろ注意したいのは逆の場合です。調査費の記載がないまま安い総額だけが提示されているときは、あとから追加になるのか、調査を省くつもりなのかを確かめてください。調査は2023年10月から資格を持った人にしか行えません。厚生労働省のポータルサイトには、こうあります。
事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの一定の要件を満たす者が行う必要があります(建築物、船舶(鋼製の船舶に限る。)は令和5年(2023年)10月から必要です。工作物は令和8年(2026年)1月から必要になりますが、それ以前であっても資格を有する者に行わせることが望ましいです)。
資格には、戸建て住宅を対象にした「一戸建て等石綿含有建材調査者」という区分もあります。見積もりの場で「調査はどの資格の方がやりますか」と聞けば、慣れた業者かどうかの目安にもなります。
築年で変わります——2006年9月1日が分かれ目
「調査は全部の家で必要」と書きましたが、調査のやり方には軽い形が用意されています。分かれ目は着工日です。
石綿障害予防規則第3条第3項は、次の建物について、材料を1つずつ調べる代わりの方法を認めています。
三 建築物若しくは工作物の新築工事若しくは船舶(日本国内で製造されたものに限る。)の製造工事の着工日又は船舶が輸入された日(第七項第四号において「着工日等」という。)が平成十八年九月一日以降である解体等対象建築物等(次号から第八号までに該当するものを除く。)当該着工日等を設計図書等の文書で確認する方法
日本では2006年(平成18年)9月から、石綿を含む製品の輸入・製造・使用などが禁止されています。だから2006年9月1日以降に着工した家は、「着工日をその書類で確認する」ことが調査になるわけです。材料の分析までは要りません。
ここから、頼む側にできるいちばん確実な準備が導けます。
着工日・建築日の分かる書類を探しておくことです。 設計図書、建築確認済証、検査済証、登記事項証明書——。書類でさっと確認が済めば、調査は軽く終わります。逆に2006年より前の家で設計図書も残っていない場合は、目視の調査で材料を確かめ、それでも分からない材料は分析に回すか、「石綿が入っているものとみなして」処理する(その分、処理費は上がります)という進み方になります。これも規則第3条に書かれた正規の選択肢です。
費用の目安——調査費の公的な相場は「ない」が正直なところです
気になる金額の話です。正直に書きます。
事前調査そのものの費用について、国の公的な相場データは見つかりませんでした(2026年8月11日時点で環境省・厚労省・国交省の公開資料を確認)。書面と目視で済む調査か、分析に回す検体がいくつあるかで変わるため、見積もりで確かめるほかありません。分析に回す検体の数は金額を左右するので、「分析は何検体の想定か」を見積もりの場で聞くと、金額の根拠が見えます。
一方、アスベストが見つかった場合の除去費用には、国土交通省のアスベスト対策Q&Aに公的な目安があります。
処理する面積によって処理単価に差があるようですが、おおよその目安となる費用を下記に示します。この除去費用は、2007年1月から2007年12月における、施工実績データより算出された除去単価です。
| アスベスト処理面積 | 除去費用の目安 |
|---|---|
| 300㎡以下 | 2.0万円/㎡〜8.5万円/㎡ |
| 300〜1,000㎡ | 1.5万円/㎡〜4.5万円/㎡ |
| 1,000㎡以上 | 1.0万円/㎡〜3.0万円/㎡ |
※ 表は横にスクロールできます
注意したいのは、この表が吹付けアスベスト(綿状の材料を吹き付けた建材)の除去単価だということです。屋根材・外壁材・床材などの板状の建材の処理は、この表とは別の話です。ご自身の家の建材がどれに当たるかを確かめる手続きが、まさに事前調査です。
解体費用の全体像は家の解体費用はいくら?30坪・40坪・50坪・60坪の早見表——木造は坪4〜5万円が目安、費用を左右する3つの条件と「安くする正しい順番」に整理しています。
補助金はあるのか——300市の解体補助DBを「アスベスト」の角度で読み直しました
「調査や除去にお金がかかるなら、補助金はないのか」。当然の疑問なので、2方向で調べました。
1つ目は、アスベスト専用の補助制度です。 国には「住宅・建築物アスベスト改修事業」という枠組みがあり、国土交通省の資料では含有調査への補助について「④補助額:限度額は原則として25万円/棟(民間事業者等が実施する場合は地方公共団体を経由)」とされています。市の実例では、川崎市が吹付けアスベストの含有調査費用を補助しています(調査箇所が1か所の場合は15万円、複数か所の場合は25万円が上限)。ただし、これらの対象は吹付け材のおそれのある建築物が中心で、木造住宅の解体でそのまま使えるとは限りません。
2つ目は、解体補助金がアスベスト費用を見てくれるかです。 ここで当サイトのデータを読み直しました。
✎ 私の調査メモ
当サイトは300市区町村の解体補助制度を公式ページで確認したDBを持っています。調べたのは制度の中身(補助率・上限・条件)で、アスベストの扱いは書いてあれば記録した、という調べ方です。このDBを「アスベスト」の角度で検索し直しました。
結果は、補助の対象費用の説明でアスベストに触れていた市は、300市中わずか2市。苫小牧市(「アスベストの事前調査費用と家財処分の費用は対象外です」)と糸島市(解体撤去に要する費用からアスベスト調査費用を除く)で、どちらも「対象外」の文脈でした。
2市しかないからといって、「残りの市では対象」という意味ではありません。同じDB・同じ調べ方で、家財処分については「対象外」と明記する市が28市拾えています(空き家の家財は、解体の前に片づけないといけないのか——300市の解体補助を「家財」の角度で読み直しました)。それと比べると、アスベスト費用の扱いは、公式ページにほとんど書かれていないというのが実態です。書かれていない以上、答えは窓口にしかありません。解体補助を使う予定なら、申請の前に「対象費用に事前調査費・除去費は含まれますか」と市に聞いてください。補助制度そのものの探し方は空き家の解体に補助金は出る?補助率1/3〜4/5・上限20万〜160万円、市でこれだけ違う——公式ページで確認した「解体補助」の正直な地図にまとめています。
頼む側の段取りを、順番に並べます
着工日の分かる書類を探す
設計図書・建築確認済証・検査済証・登記事項証明書など。2006年9月1日以降の着工なら、書面確認で調査が終わります
市に補助の扱いを聞く
解体補助を使うなら「対象費用に調査費・除去費が入るか」を窓口で確認。アスベスト専用の補助の有無もこのとき聞けます
見積もりの場で調査の中身を聞く
調査費が入っているか・どの資格の調査者か・分析は何検体の想定か・報告まで業者がやるか、の4点です
含有が分かったら見積もりを取り直す
除去や処理のやり方で金額が変わります。複数社の比較が効く場面です
工事中は現場の掲示を確認
調査結果は工事現場に掲示することとされています。近所から聞かれたときの答えにもなります
調査結果の現場掲示は、近所への説明という点でも役立ちます。くわしくは解体工事の近所への挨拶——どこまで回るのか、いつ行くのか、手紙でもいいのかに書いています。
つまずくのは、ここです
! ここに注意
① 「小さい家だから調査不要」と言う業者。 調査は規模の大小にかかわらず必要です。80㎡は報告の基準であって、調査を省ける基準ではありません。この説明が逆になっている業者は、法令の理解を疑ってよいサインです。
② 調査費の行がない見積もり。 費用は頼んだ人の負担と法律で決まっているので、載っていないほうが不自然です。あとからの追加請求か、調査の省略か、どちらにしても先に確かめてください。
③ 書類を探さずに分析へ進む。 2006年9月1日以降の着工なら書面確認で済んだのに、書類が見つからないまま分析費を払うのはもったいない流れです。見積もりの前に一度、家の書類を探してください。
よくある質問
アスベストの事前調査は、どんな家でも必要ですか?
必要です。厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトは「解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無の事前調査を行う必要があります。」としています。よく聞く「80㎡」は調査そのものではなく、調査結果を行政に報告する義務の基準です(解体部分の床面積の合計が80㎡以上の解体工事が報告の対象)。ただし、2006年9月1日以降に着工した家は、着工日を設計図書などの書面で確認する方法で調査を終えられます。
アスベストの調査費用は誰が払うのですか?
法律に答えがあります。大気汚染防止法第18条の15第2項は、解体等工事の発注者(=工事を頼んだ人)が、元請業者が行う事前調査に要する費用を「適正に負担する」ことを定めています。つまり、見積もりに事前調査の費用が載っているのは正当です。逆に、調査費の記載がないまま話が進む見積もりのほうが、あとで追加請求になったり、調査を省略していたりする心配があります。
2006年より新しい家でも、調査は必要ですか?
調査は必要ですが、方法が軽くなります。石綿障害予防規則第3条第3項は、着工日が平成18年(2006年)9月1日以降の建築物について、着工日を設計図書などの文書で確認する方法によることができると定めています。日本では2006年(平成18年)9月から、石綿を含む製品の輸入・製造・使用などが禁止されているためです。建築確認済証や登記事項証明書など、着工日・建築日の分かる書類が残っていると、この確認がスムーズです。
アスベストが見つかったら、費用はどれくらい上がりますか?
建材の種類と量によって大きく変わるため、一概には言えません。公的な目安としては、国土交通省のアスベスト対策Q&Aが吹付けアスベストの除去費用を公開しており、処理面積300㎡以下で1㎡あたり2.0万円〜8.5万円などとされています(2007年の施工実績データより算出・状況により大幅な違いがあるとの注記つき)。この表は吹付け材の単価で、屋根材・外壁材など板状の建材の処理は別の話です。ご自身の家の建材がどれに当たるかは事前調査で決まるので、金額感は現場の見積もりで確かめてください。
アスベストの調査や除去に補助金はありますか?
建物や自治体によってはあります。国には住宅・建築物アスベスト改修事業という枠組みがあり、含有調査への補助は原則25万円が1棟あたりの限度額とされています。市の実例では、川崎市が吹付けアスベストの含有調査費用を補助しています(1か所調査は15万円、複数か所は25万円が上限)。ただし対象は吹付け材のある建築物が中心で、木造住宅の解体で使えるとは限りません。当サイトが300市区町村の解体補助を調べたDBでは、補助の対象費用の説明でアスベストに触れていた市は2市だけで、どちらも「調査費用は対象外」でした。お住まいの市の扱いは窓口で確認してください。
まとめ
- 調査はどの解体でも必要です。 80㎡は行政への報告の基準で、調査を省ける基準ではありません
- 費用は頼んだ人の負担と法律に書かれています。 見積もりに調査費の行があるのは正当。ない見積もりのほうを疑ってください
- 2023年10月からは資格を持つ調査者が必須です。 「どの資格の方が調査しますか」は、業者を見る質問になります
- 2006年9月1日以降に着工した家は、書面確認で済みます。 建築確認済証などの書類探しが、いちばん確実な節約です
- 除去費用の公的な目安は吹付け材で1㎡あたり2.0万〜8.5万円(300㎡以下・2007年実績データ)。板状の建材の処理は別の話なので、現場の見積もりで確認を
- 解体補助金がアスベスト費用を見てくれるかは、公式ページにほぼ書かれていません。 300市中、触れていたのは2市(どちらも対象外)。申請前に窓口で聞いてください
調査費・分析の検体数・除去の要否で、解体の総額は動きます。1社の言い値で決めず、複数の見積もりを並べて「調査の中身」ごと比べるのが安全です。
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- 気に入らなければ断って大丈夫です
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連絡してよい時間帯は、申込のときに指定できます。見積もりを見てから決められます。
申込のあと何が起きるか
申込のあと、まず運営から希望を確かめる連絡が1本入り、そのあと紹介された会社から連絡が入ります。紹介は断ってかまいません。
※本記事の制度・法令情報は2026年8月11日時点で、法令の原文(e-Gov法令検索)と環境省・厚生労働省・国土交通省・各自治体の公式ページを確認したものです。制度は変更されることがあります。実際の手続き・補助の扱いは、必ず公式ページ・窓口で最新の内容をご確認ください。
参考情報(出典)
- 大気汚染防止法(e-Gov法令検索)第18条の15・第35条(確認日 2026-08-11)
- 石綿障害予防規則(e-Gov法令検索)第3条(確認日 2026-08-11)
- 石綿事前調査結果の報告について(環境省)(確認日 2026-08-11)
- 工事の元請業者のみなさまへ(厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト)(確認日 2026-08-11)
- アスベスト対策Q&A(国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 吹付けアスベスト補助金制度(川崎市)(確認日 2026-08-11)
家の補助金ナビ編集部
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