家を解体したあとの建物滅失登記——自分でできるのか、費用はいくらか、未登記の家はどうするのか
工事が終わって、家が更地になりました。解体業者から「滅失登記をお願いします」と証明書を渡されて、そこで手が止まります。
登記と聞くだけで、専門家に頼むもの、費用がかかるもの、という気がします。しかも期限があると聞くと、なおさら焦ります。
結論から言うと、建物滅失登記は自分で申請できる型の登記です。法務局の申請書様式に登録免許税の欄はなく、かかるのは書類の実費くらい。期限は壊した日から1か月以内で、これは法律で決まっています。
そして分かれ道が2つあります。未登記の家なら行き先は法務局ではなく市役所。名義人が亡くなっていれば、相続登記を待たずに相続人の1人から申請できます。
この記事では、書類・費用・期限・2つの分かれ道を、法務局と市の公式資料で整理します。
先に結論
✓ ここが要点
自分で申請できます — 中心になる書類は、申請書1枚と、解体業者がくれる建物滅失証明書。出し方は窓口・郵送・オンラインの3つです
費用は実費くらいです — 法務局の申請書様式・記載例に、登録免許税の欄はありません(2026年8月10日確認)。払うのは戸籍などを取る手数料と交通費・郵送料です
期限は壊した日から1か月 — 不動産登記法第57条。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(第164条第1項)
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お住まいの市区町村で使えるかは、郵便番号だけで確認できます
市区町村の制度と国の制度を1画面にまとめて表示します。外壁・外構・解体・介護など、工事の種類を切り替えて確認することもできます。
お住まいの市区町村の制度を調べる公式ページで確認した情報のみ(各項目に確認日つき)
滅失登記は、登記簿から建物を消す手続きです
家を壊しても、登記簿の上では建物がまだ存在しています。この記録を閉じるのが建物滅失登記です。
不動産登記法第57条は、こう定めています。
建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(中略)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
「申請できる」ではなく「申請しなければならない」、つまり義務です。そして同法第164条第1項は、この義務を含む申請を「正当な理由がないのにその申請を怠ったとき」は十万円以下の過料に処するとしています。
売買の名義変更には申請の期限がありませんが、滅失登記は建物の物理的な現状を登記簿に合わせる「表示に関する登記」で、こちらには期限と義務があります。ここが混同されやすいところです。
自分でできるのか——書類は2つが中心です
できます。そろえる書類の中心は2つです。
- 申請書 — 法務局サイトに様式と記載例があります。書く内容は建物の所在・家屋番号など、登記事項証明書か固定資産税の課税明細書を見ながら写せる項目です
- 建物滅失証明書 — 解体業者が発行する「取り壊しました」の証明です。取毀(とりこわし)証明書と呼ぶ業者もあります
法務局の記載例には、業者側の添付書類について、こう書かれています。
なお、工事請負人が法人である場合に、記載例のとおり申請書に当該法人の会社法人等番号を記載したときは、当該法人の代表者の資格を証する書面(登記事項証明書など)及び代表者の印鑑証明書(現在登記所に印鑑を登録している場合に限ります。)の添付を省略することができます。
つまり、業者の会社法人等番号を申請書に書けば、業者の印鑑証明書などを預かる必要はありません。証明書を受け取るとき、番号もあわせて聞いておくと一往復減ります。
建物滅失証明書を受け取る
工事が終わったら、その場で。あとから頼むと業者との連絡に時間がかかります
申請書を書く
法務局サイトの様式に、登記事項証明書か課税明細書を見ながら記入します
管轄の法務局に出す
建物の所在地を管轄する法務局です。窓口・郵送・オンラインの3ルートがあります
登記完了証を受け取る
完了すると登記記録が閉鎖されます。市役所への連絡が要るかは下の節をご覧ください
出し方は3つあります。法務局の案内には「登記申請の方法には、書面申請、オンライン申請の2つがあります」とあり、書面申請は窓口へ持参するほか、「郵送による申請も可能です」。郵送のときは封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と書いて書留郵便で送ります。
オンラインは、個人の場合マイナンバーカードとICカードリーダライタを使う方法が案内されています(いずれも2026年8月10日確認)。
費用——申請書に、税金の欄がありません
✎ 私の調査メモ
法務局が公開している建物滅失登記の申請書様式(令和元年5月更新版)と記載例(令和6年3月更新版)を、2026年8月10日に確認しました。売買や相続の登記で出てくる登録免許税について、この様式と記載例には記載欄そのものがありません。
自分で申請する場合に実際に払うのは、添付書類をそろえる実費です。戸籍や住民票を取る手数料、法務局までの交通費、郵送なら書留の料金。数百円から数千円の世界です。
専門家に頼む場合、相手は司法書士ではなく土地家屋調査士です。土地家屋調査士法第3条が、不動産の「表示に関する登記」の調査・申請手続きを調査士の業務と定めています。報酬は事務所ごとに違うため、この記事では金額を書きません。頼む前に見積もりを確認してください。
遠方の実家で戸籍集めから頼みたい、仕事を休めない——そういう事情なら頼む価値があります。逆に、証明書が手元にあって法務局に行ける方なら、自分で出せる型の手続きです。
期限——「壊した日」から1か月です
起算日は工事の完了日ではなく、建物が滅失した日です。実務では取り壊しが終わった日と考えて、証明書の日付を確認してください。
1か月を過ぎてしまった場合でも、申請の手続き自体は同じです。過料の扱いは法務局側の判断ですが、放置の期間が延びるほど困りごとの種類が増えます。
- 税金 — 登記簿に建物が残ったままだと、建物がないのに固定資産税の課税が続くことがあります
- 土地の売却 — 買い手側の登記の前に、滅失登記を求められて止まります
- 相続 — 世代をまたぐと、証明書を出した解体業者がもう連絡のつかない会社になっていることがあります
なお、解体後の固定資産税は建物分が消える一方で、土地の税額が上がるのが普通です。そちらの仕組みは家を解体すると固定資産税は6倍になる?——実際は「3〜4倍程度」が多い理由と、放置した空き家でも上がる新ルールの正直な話に分けて書いています。
分かれ道①——未登記の家は、法務局ではなく市役所です
古い家では、そもそも建物が登記されていないことがあります。この場合、佐賀地方法務局のチェックリストにはっきり書かれています。
なお、登記がされていない建物については、滅失の登記申請はできません。
消す記録が法務局に無いのだから、当然といえば当然です。代わりの行き先は市区町村の資産税の窓口で、固定資産税の課税を止めるための届出を出します。岡山市の案内はこうです。
家屋を取り壊した場合、登記されている家屋については、法務局に滅失登記の申請をしてください。登記されていない家屋の場合、または登記されている家屋であっても滅失登記が遅れる場合は、各区市税事務所・各支所・各地域センターに家屋滅失届を提出してください。
届出の名前は市によって違いますが、型は同じです。高崎市は「本庁資産税課土地家屋担当、若しくは各支所税務課に届け出をしてください」としています(いずれも2026年8月10日確認)。
では登記済みの家なら市への連絡は不要か——ここは市によって運用が分かれます。鹿児島市は「滅失登記が完了すると法務局から登記された旨が市役所へ通知されますので、市役所での申請は必要ありません。」と明記する一方、高崎市は登記されている家屋について、市役所への届け出とは別に法務局へも建物滅失登記をするよう、両方を案内しています。
迷ったら、固定資産税の課税明細書に書かれている資産税の窓口に電話で確かめるのが確実です。
自分の家が登記されているかどうかは、課税明細書に「未登記」の表記があるか、法務局でその建物の登記事項証明書が取れるかで確認できます。
分かれ道②——名義人が亡くなっていても、相続人の1人から申請できます
実家の解体では、登記簿の名義が亡くなった親のまま、というのがむしろ普通です。この場合も、先に相続登記を済ませる必要はありません。佐賀地方法務局のチェックリストの一文です。
所有者が死亡している場合は、相続人の1人からの登記申請が可能です。
兄弟がいても、全員の署名を集める必要はなく、相続人のうち1人が申請人になれます。添付書類は増えます。同じチェックリストによると、所有者が亡くなった記載のある戸籍、申請する人が所有者の相続人であることが確認できる戸籍、登記簿上の住所と本籍のつながりを確認できる戸籍の附票など、それに申請人の住民票または戸籍の附票です。
ここで注意が1つ。これは滅失登記の話であって、解体の補助金の話ではありません。補助金の申請条件としての名義・相続の扱いは市ごとに違い、相続登記が済んでいることを条件にする市もあります。そちらは名義が親のままの実家——相続登記が済んでいなくても通る市と、登記が済んでいることが絶対条件の市で、市の公式資料の逐語つきで整理しています。
つまずくのは、ここです
! ここに注意
① 建物滅失証明書をもらい損ねる。 工事完了のタイミングで受け取るのがいちばん確実です。数年後に頼もうとすると、業者が廃業していて取り直せないことがあります。
② 未登記なのに法務局に行ってしまう。 未登記の建物は滅失登記の申請ができません。行き先は市区町村の資産税の窓口です。逆に、登記済みなのに市への届出だけで済ませると、登記簿には建物が残ったままになります。
③ 1か月を過ぎて、そのまま放置する。 期限を過ぎても手続きは同じです。時間がたつほど書類の取り直しが難しくなるので、気づいた時点で動いてください。
よくある質問
建物滅失登記は自分でできますか?
できます。中心になる書類は、法務局の申請書(様式は法務局サイトからダウンロードできます)と、解体業者が発行する建物滅失証明書の2つです。業者が法人の場合、申請書に業者の会社法人等番号を書けば、業者の代表者の資格を証する書面や印鑑証明書の添付は省略できると法務局の記載例に書かれています。出し方は窓口・郵送・オンラインの3つがあり、郵送は封筒に「不動産登記申請書在中」と書いて書留で送ります。
建物滅失登記の費用はいくらかかりますか?
法務局が公開している建物滅失登記の申請書様式と記載例には、登録免許税の欄がありません(2026年8月10日確認)。自分で申請する場合に実際に払うのは、戸籍や住民票など添付書類を取る手数料、交通費や郵送料といった実費です。専門家に頼む場合の相手は土地家屋調査士で(土地家屋調査士法第3条)、報酬は事務所によって違うため、依頼前に見積もりを確認してください。
滅失登記の期限はいつまでですか?過ぎたらどうなりますか?
不動産登記法第57条で、建物が滅失した日から1か月以内に申請することが義務とされています。正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象です(同法第164条第1項)。1か月を過ぎてしまっていても、申請の手続き自体は同じです。放置すると、建物がないのに固定資産税の課税が続くことや、土地を売るときに止まることがあるため、気づいた時点で申請してください。
未登記の建物を壊した場合は、どうすればいいですか?
登記されていない建物は、滅失登記の申請自体ができません(佐賀地方法務局のチェックリストに明記されています)。行き先は法務局ではなく市区町村の資産税の窓口で、「家屋滅失届」などの名前の届出を出します。岡山市は、未登記の家屋や滅失登記が遅れる場合に家屋滅失届を提出するよう案内しています。自分の家が登記されているかは、固定資産税の課税明細書や、法務局で登記事項証明書が取れるかどうかで確かめられます。
名義人が亡くなっています。相続登記をしてからでないと滅失登記はできませんか?
先に相続登記を済ませる必要はありません。佐賀地方法務局のチェックリストは「所有者が死亡している場合は、相続人の1人からの登記申請が可能です。」としています。添付するのは、所有者が亡くなった記載のある戸籍、申請する人が相続人だと確認できる戸籍、登記簿上の住所と本籍のつながりを確認できる戸籍の附票など、それに申請人の住民票または戸籍の附票です。
まとめ
- 自分で申請できる型の登記です。 申請書と、解体業者がくれる建物滅失証明書が中心。窓口・郵送・オンラインの3ルートがあります
- 費用は実費くらい。 法務局の申請書様式・記載例に登録免許税の欄はありません。頼むなら相手は土地家屋調査士です
- 期限は壊した日から1か月。 過ぎても手続きは同じなので、気づいた時点で出してください
- 未登記の家は市役所へ。 滅失登記はできず、家屋滅失届などの届出になります。登記済みでも市への届出を求める市があるので、迷ったら資産税の窓口へ電話を
- 名義人が亡くなっていても、相続人の1人から申請できます。 相続登記を待つ必要はありません
解体の前後の段取り全体は実家を解体するまえにやること——順番を戻せない3つと、そのほかの段取りに、お住まいの市の解体補助は市区町村別の解体補助DBにまとめています。
※本記事の手続き情報は2026年8月10日時点で法務局・各市の公式ページと様式・記載例を確認したものです。様式や運用は変わることがあります。申請前に、建物の所在地を管轄する法務局と、お住まいの市区町村の資産税窓口で最新の案内をご確認ください。
参考情報(出典)
- 不動産登記法(e-Gov法令検索)第57条・第164条(確認日 2026-08-10)
- 不動産登記の申請書様式について(法務局)(確認日 2026-08-10)
- 建物滅失登記申請書 様式(法務局・PDF)(確認日 2026-08-10)
- 建物滅失登記申請書 記載例(法務局・PDF)(確認日 2026-08-10)
- 不動産登記申請書提出前のチェックリスト(建物滅失)(佐賀地方法務局・PDF)(確認日 2026-08-10)
- 建物を取り壊した(建物滅失の登記をオンライン申請したい方)(法務局)(確認日 2026-08-10)
- 家屋を取り壊した場合(岡山市)(確認日 2026-08-10)
- 家屋を取り壊した時(鹿児島市)(確認日 2026-08-10)
- 家屋を取壊し・用途変更した場合(高崎市)(確認日 2026-08-10)
- 土地家屋調査士法(e-Gov法令検索)第3条(確認日 2026-08-10)
家の補助金ナビ編集部
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