介護保険の住宅改修は「工事のまえの申請」が決まりです——先に工事をしてしまったときに残る道
介護保険で手すりや段差の工事をするとき、いちばん多い失敗は、工事の中身ではなく順番です。
「退院が迫っていたから、先に工事した」「業者が、申請はあとでいいと言った」「そもそも申請が先だと知らなかった」——理由はさまざまですが、結果は同じところに行き着きます。
結論から言うと、介護保険の住宅改修は、工事のまえの申請(事前申請)が省令で決まっています。先に工事をした場合、原則としてお金は戻りません。
ただし、これで話は終わりません。同じ条文に「やむを得ない事情がある場合」の例外が書かれています。当てはまるかどうかを決めるのは市なので、工事がすんでいても、あきらめる前にやることが残っています。
この記事では、条文の原文と厚生労働省の資料、市の公式Q&Aで、「原則」と「残る道」の両方を整理します。制度の全体像(対象になる6つの工事・上限20万円のしくみ)は介護保険の住宅改修の使い方——上限20万円・自己負担1〜3割、対象になる6つの工事と「工事の前に申請」の正しい順番からどうぞ。
先に結論
✓ ここが要点
事前申請は省令の条文です — 介護保険法施行規則第75条第1項。市のローカルルールではないので、どの市でも原則は同じです
先に工事をしたら、原則は支給されません — 相模原市「工事着工後の申請はできません」。名取市も原則として受給できなくなると明文で案内しています
ただし例外も条文にあります — 第75条第2項のやむを得ない事情がある場合。当てはまるかは市の判断なので、工事後でもまず窓口に相談してください
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事前申請は、市のローカルルールではありません
「うちの市は手続きにうるさい」と感じる方がいますが、実は市の裁量ではありません。介護保険法施行規則第75条第1項が、こう定めています。
居宅介護住宅改修費の支給を受けようとする居宅要介護被保険者は、住宅改修(法第四十五条第一項に規定する住宅改修をいう。以下同じ。)を行おうとするときには、あらかじめ、第一号から第四号までに掲げる事項を記載した申請書又は書類を提出し、住宅改修が完了した後に第五号から第七号までに掲げる書類を提出しなければならない。
「あらかじめ」提出するのが、工事の内容・見積書・理由書(住宅改修が必要な理由書は誰が書くのか——書ける人は決まっています。費用は本人負担ゼロ、そして「工事の計画に合わせて書く」はルール違反です)・改修前の状態が分かる写真。完了した後に提出するのが、かかった費用・領収証・完了後の写真です。
つまりこの制度は、工事のまえに市が計画を確認し、工事のあとに実物を確認する二段構えとして省令に書かれています。前半を飛ばすと、市は「その工事が本当に必要だったか」を確認する機会を失う——だから事後の申請は原則受け付けられない、という構造です。
なお、要介護認定の結果待ちの間に事前申請できるか、入院中に工事してよいかは、それぞれ別の記事に分けています。認定切れ・申請中・区分変更中に住宅改修はできるか——「工事した日」ではなく「認定の有効期間内に完成した部分」で決まりますと入院中に実家を直しておけるか——工事はできます。お金が出るかは「退院できたか」で決まる、という構造ですをどうぞ。
先に工事をしてしまったら——原則は、支給されません
まず原則を、市の言葉で確認します。相模原市のQ&Aは、申請時期の質問にこう答えています。
住宅改修費の支給申請は、必ず工事前に行います。この申請を「事前申請」といい、工事着工後の申請はできません。
名取市は、事前申請の案内ページでこう書いています。
事前申請が無い場合は、原則として住宅改修費を受給することができなくなりますので、ご注意ください。
着工の時点で、原則の線は引かれます。 「工事が終わってから、まとめて申請すればいい」は、この制度では通用しません。上限20万円の工事なら、最大18万円(自己負担1割の場合)が戻らなくなる話なので、間違いの代償は小さくありません。
「やむを得ない事情」——例外も、条文に書かれています
ここからが、この記事の本題です。先ほどの第75条には、第2項があります。
前項の規定にかかわらず、やむを得ない事情がある場合には、住宅改修が完了した後に同項第一号及び第三号に掲げる事項を記載した申請書又は書類を提出することができる。
厚生労働省の住宅改修の説明資料にも、同じことが注記されています。
やむを得ない事情がある場合には、工事完成後に申請することができる。
つまり「先に工事をしたら絶対に終わり」ではなく、事情によっては、完了後の提出が認められる道が制度の中に用意されています。
では「やむを得ない事情」とは何か。条文に定義はなく、判断するのは保険者(=市区町村)です。公式の例示として、さいたま市の手引きがいちばん具体的です。
「やむを得ない事情がある場合」とは、入院又は入所者が退院又は退所後の住宅での受け入れのため、あらかじめ住宅改修に着工する必要がある場合等、住宅改修を行おうとするときに申請を行うことが制度上困難な場合をいいます。
退院・退所が迫っていて、申請の結果を待っていては家の受け入れ準備が間に合わなかった——これが代表の型です。裏を返すと、「制度を知らなかった」「業者に任せきりだった」だけでは、申請が制度上困難だったとは言いにくい、ということでもあります。
工事がすんでしまった方が今からやることは、次の3つです。
- 領収書・見積書・工事前後の写真を集める(事後に提出できる書類がそろうほど、市は判断しやすくなります)
- 事情を示す材料を添える(退院日の分かる書類、認定申請の日付など)
- 市の介護保険の窓口に電話する(認められるかどうかを決められるのは市だけです。ケアマネジャーがいる場合は先に相談を)
期限の話——完了後の申請は「2年」です
事前申請はきちんと済ませたのに、工事のあとの提出(領収証など)を忘れているという逆パターンも実際にあります。
期限は法律で決まっています。介護保険法第200条は、保険給付を受ける権利は行使できる時から2年を経過したときは時効によって消滅する、と定めています。市の運用も同じで、相模原市はこう案内しています。
工事完了後、領収日の翌日から2年以内に「事後申請」をしてください。
工事代金を払った日を起点に2年、と覚えてください。書類を出し切るまでが手続きです。
事前申請のあとで、工事の内容が変わったら
現場ではよくあることです。壁の中の下地の位置で手すりの場所が変わる、工事を始めたら追加の段差が見つかる——。
事前申請の内容と実際の工事がずれたまま完了報告をすると、ずれた部分が対象から外れることがあります。相模原市のQ&Aは、変更の手続きをこう案内しています。
何らかの事情で住宅改修の計画を変更せざるを得ない場合には、提出した理由書にその理由を加筆し、新たな見積り・図面と併せて提出します。
変更が出たら、工事を進める前にケアマネジャーか市に一報——これだけで防げます。
つまずくのは、ここです
! ここに注意
① 「申請はあとでいい」と言って着工を急がせる業者。 この制度は事前申請と市の確認が組み込まれています。正規の手順を飛ばす提案は、その時点で疑ってください。「介護保険で直せます」と勧誘して先に契約させる訪問販売と同じ構造です。
② 退院前のあせりで、市に電話せずに着工する。 退院・退所前の改修はまさに「やむを得ない事情」の典型例として市も想定しています。着工の前に電話を1本入れて事前申請の形を整えれば、例外に頼らず正面から進められます。
③ 事前申請だけして、完了後の提出を忘れる。 領収日の翌日から2年で権利が消えます。工事が終わった月のうちに、領収証と写真を出し切ってください。
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介護保険の住宅改修は、工事のまえの申請に見積書がいります。手すりや段差解消などの小さな工事にも対応した、無料の一括見積もりサービスです。
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相談だけでも無料で、依頼する義務はありません。申込のあと、入力した電話番号に確認の電話が入ります。
申込のあと何が起きるか
フォームを送ると、まずリフォームガイドから電話で希望を確かめる連絡が入り、そのうえで会社を紹介する流れです。電話がつながらないと手続きが進まないので、出られる番号を入れてください。紹介された会社に依頼する義務はありません。
よくある質問
住宅改修の事前申請は、法律で決まっているのですか?
決まっています。介護保険法施行規則第75条第1項が、住宅改修を行おうとするときには「あらかじめ」申請書や理由書などを提出し、工事が完了した後に領収証などを提出する、という二段構えを定めています。市が独自に課している手続きではなく、全国共通の省令のルールです。だからどの市でも「工事のまえの申請」を求められますし、市の判断でこの原則そのものを無くすことはできません。
事前申請をせずに工事を終えてしまいました。もう1円も戻りませんか?
原則は支給されません。相模原市は「住宅改修費の支給申請は、必ず工事前に行います。この申請を「事前申請」といい、工事着工後の申請はできません。」とし、名取市も事前申請が無い場合は原則として住宅改修費を受給できなくなると案内しています。ただし、介護保険法施行規則第75条第2項に「やむを得ない事情がある場合」の例外があり、厚生労働省の資料にも、やむを得ない事情がある場合には工事完成後に申請することができると書かれています。当てはまるかを判断するのは市です。工事がすんでいても、領収書や工事前後の写真を手元に集めたうえで、まず市の介護保険の窓口に相談してください。
「やむを得ない事情」とは、どんな場合ですか?
条文そのものには定義がなく、市が判断します。公式の例示としては、さいたま市が「入院又は入所者が退院又は退所後の住宅での受け入れのため、あらかじめ住宅改修に着工する必要がある場合等、住宅改修を行おうとするときに申請を行うことが制度上困難な場合」としています。退院が迫っていて、申請の結果を待っていては家の受け入れ準備が間に合わない、という型が代表例です。逆に「知らなかった」「業者に任せていた」だけでは認められにくいのが実情なので、事情を説明できる材料(退院日が分かる書類など)を持って市に相談してください。
工事のあとの申請に、期限はありますか?
あります。介護保険の給付を受ける権利は、行使できる時から2年を経過すると時効によって消滅します(介護保険法第200条)。市の運用でも、相模原市は工事完了後、領収日の翌日から2年以内の申請を案内しています。事前申請をきちんと済ませて工事をしたのに、完了後の申請(領収証などの提出)を忘れているケースは実際にあります。書類を出し切るまでが手続きです。
事前申請のあとで、工事の内容が変わったらどうすればいいですか?
市に変更の手続きをします。相模原市のQ&Aでは、何らかの事情で住宅改修の計画を変更せざるを得ない場合には、提出した理由書にその理由を加筆し、新たな見積り・図面と併せて提出するとされています。手すりの位置や本数など、事前申請の内容と実際の工事がずれたまま完了報告をすると、ずれた部分が対象から外れることがあります。現場で変更が出たら、工事を進める前に、ケアマネジャーか市に一報を入れるのが安全です。
まとめ
- 事前申請は省令(介護保険法施行規則第75条)の決まりです。 どの市でも、工事のまえの申請が原則です
- 先に工事をしたら、原則は支給されません。 相模原市・名取市とも明文で案内しています
- ただし「やむを得ない事情」の例外が条文にあります。 退院・退所前の受け入れ準備が代表例(さいたま市の例示)。判断できるのは市だけなので、工事後でもまず窓口へ
- 完了後の提出は、領収日の翌日から2年以内に。 権利は2年で時効です(介護保険法第200条)
- 工事の内容が変わったら、進める前に一報を。 理由書への加筆と新しい見積り・図面で手続きできます
- 「申請はあとでいい」と言う業者は、その時点で疑ってください
※本記事の制度情報は2026年8月11日時点で、法令の原文(e-Gov法令検索)・厚生労働省の公開資料・各市の公式ページと手引きを確認したものです。運用の細部は市区町村で異なります。実際の手続きは、必ずお住まいの市の介護保険窓口・公式ページで最新の内容をご確認ください。
参考情報(出典)
- 介護保険法施行規則(e-Gov法令検索)第75条(確認日 2026-08-11)
- 介護保険法(e-Gov法令検索)第200条(確認日 2026-08-11)
- 介護保険における住宅改修(厚生労働省・PDF)(確認日 2026-08-11)
- 介護保険 住宅改修のQ&A 令和6年4月改定版(相模原市・PDF)(確認日 2026-08-11)
- 介護保険住宅改修費の受給には「事前申請」が必要です(名取市)(確認日 2026-08-11)
- 住宅改修の手引き(さいたま市・PDF)(確認日 2026-08-11)
家の補助金ナビ編集部
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