解体工事でもめたときの相談先——窓口は、困りごとの種類ではなく相手との関係で決まります
建設工事紛争審査会は、解体を頼んだ人が使える公的な窓口です。国土交通省の説明はこうです。
建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争の簡易・迅速・妥当な解決を図るために、当事者の申請に基づいて、あっせん、調停、仲裁を行う公的機関です。
解体工事のトラブルを調べると、弁護士事務所のページと業者のブログばかりが並びます。けれども、その手前に置かれている公的な手続があり、あっせんなら2万円から始められます。この記事では、どの窓口が何を扱うのか、費用はいくらか、契約書がないとどうなるのかを、条文と国土交通省の公表資料で整理します。
先に結論
✓ ここが要点
- 相談先は、困りごとの種類ではなく相手と自分の関係で決まります
- 契約した業者ともめている=建設工事紛争審査会(あっせん・調停・仲裁)
- 契約していない相手(隣の家の工事)は、審査会では扱えません
- 建設業法に反する行為の通報は駆け込みホットライン。行き先に迷うなら国土交通省の窓口ナビ
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窓口は、相手との関係で決まります
建設工事紛争審査会が扱うのは、契約の当事者どうしの紛争だけです。
契約当事者間の紛争とは、例えば、注文者と元請負人の間、元請負人と下請負人の間、一次下請負人と二次下請負人の間など契約の直接の当事者となっている者の間の紛争です。
この1行が、窓口を選ぶときの分かれ目になります。自分が契約した相手なら審査会、契約していない相手なら別の窓口。困りごとの種類ではなく、相手との関係が先に来ます。
| 何が起きたか | 相手 | 行き先 |
|---|---|---|
| 追加請求・契約の解除・仕上がりが約束と違う | 契約した業者 | 建設工事紛争審査会 |
| 契約書を交わしてくれない・建設業法に反する行為 | 契約した業者 | 駆け込みホットライン(0570-018-240) |
| 訪問販売で契約した・解除したい | 契約した業者 | 消費者ホットライン188 |
| 廃材の行き先が分からない・完了報告が来ない | 契約した業者 | 現場のある都道府県(建設リサイクル法第18条第2項) |
| 騒音・振動・ほこり | 隣の家が頼んだ工事 | 市区町村の環境の担当課 |
※ 表は横にスクロールできます
どこへ行けばよいか決めかねるときのために、国土交通省が案内の入口を用意しています。改正建設業法の全面施行(2025年12月12日)に伴って整備された、建設業相談窓口ナビです。
数問程度の簡単な質問に答えることで、建設工事や建設業者に係る通報・相談先が確認できます。
電話で聞きたい場合は、建設業取引適正化センター(東京 03-3239-5095/大阪 06-6767-3939)があります。
元請・下請間等の取引で「困ったことが起きたが、どうしたら良いかわからない」という方には、その解決方法をアドバイスし、「どこに相談したら良いかわからない」という方には、相談先である関係行政機関、紛争処理機関等をご紹介します。
契約した業者ともめたとき——建設工事紛争審査会
審査会が扱う紛争の範囲は、こう書かれています。
審査会は、当事者の一方又は双方が建設業者である場合の紛争のうち工事の瑕疵(不具合)、請負代金の未払いなどのような「工事請負契約」の解釈又は実施をめぐる紛争の処理を行います。
解体で起きるもめごとのうち、次のようなものはこの中に入ります。追加費用の請求、地中から出たものの撤去代、工事の途中でやめたときの精算、約束した範囲まで壊してもらえなかった——どれも請負契約の実施をめぐる話だからです。
期待してはいけないことも、国土交通省ははっきり書いています。
建設業者に行政上の指導監督を行う機関や、技術的な鑑定を行う機関ではありません。
業者を処分してもらう場所でも、第三者に良し悪しを鑑定してもらう場所でもありません。 求められるのはお金や工事の内容についての解決で、業者への処分を求めるなら次に出てくる駆け込みホットラインが行き先になります。
規模の感覚も公開されています。国土交通省は、中央建設工事紛争審査会には年間おおむね40〜50件の申請があり、そのうち6割近くの事件が解決していると書いています。紛争解決事例のページには、申請の趣旨・相手の答弁・最終的にどう決まったかまで載っています。
個人が申請した4件は、あっせんと調停で申請から解決まで3〜7か月、審理の回数は2〜4回でした。数か月かけて数回集まる手続だと考えておくと、見込みが外れません。
どの審査会に出すのか——相手の許可で決まります
審査会は、国土交通省に置かれた中央のものと、47都道府県に置かれたものがあります。どこへ出すかは自分で選べません。管轄の決まりのうち、個人が解体を頼んだ場合に効いてくるのはここです。
当事者の一方のみが建設業者で、当該都道府県の知事の許可を受けたものである場合
相手が都道府県知事の許可を受けた業者なら、その都道府県の審査会。相手が国土交通大臣の許可を受けた業者なら、中央の審査会です。
ここで、解体工事に特有の事情があります。建設業の許可は、一定の規模を超える工事にしか要りません。
工事全体の請負代金の額が500万円未満の工事(建築一式工事については、1,500万円未満の工事又は延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)にあっては、いずれの建設工事も請け負うことが可能
当サイトの費用の早見表では、木造の解体は坪あたり4万〜5万円です。延べ床30坪の家なら120万〜150万円で、500万円の線にはかなりの余裕があります(解体費用の坪単価)。家1軒の解体は、建設業の許可がなくても請け負える帯に入るということです。
許可のない業者との紛争は、工事の現場がある都道府県の審査会が管轄します。なお、許可がなくても解体工事業をするには建設リサイクル法第21条の登録が要るので、相手が登録業者かどうかは都道府県で確認できます。
✎ 私の調査メモ
どの審査会が管轄するか分からないときは、中央建設工事紛争審査会(国土交通省不動産・建設経済局建設業課紛争調整官室)に問い合わせれば、どこが管轄になるかを説明してもらえると国土交通省が案内しています。全国の事務局の一覧も国土交通省のページに出ています。当事者の双方が合意すれば、合意した審査会に出すこともできます。
費用——あっせんは2万円から
申請にかかるお金は、申請手数料と通信運搬費の2つです。手数料は請求する額で決まります。
| 手続 | 請求額100万円までの申請手数料 | 通信運搬費の予納額 |
|---|---|---|
| あっせん | 10,000円 | 10,000円 |
| 調停 | 20,000円 | 30,000円 |
| 仲裁 | 50,000円 | 50,000円 |
※ 表は横にスクロールできます
請求額が上がると手数料も上がります。国土交通省は750万5,000円を請求する場合の計算例を出していて、あっせんなら21,765円、調停なら42,275円、仲裁なら105,060円です。額を決められないときの扱いも決まっています。
請求する事項の価額を算定できないときは、その価額を500万円として申請手数料を計算します。
やめたときの扱いもあります。
納付された申請手数料は、あっせん・調停で第1回審理の前に申請を取り下げた場合又は仲裁で審理が開催されることなく終了決定がされた場合には1/2相当額が還付されます。
申し込んでみて、話がついたら半分戻る。 通信運搬費も終了後に精算され、余りは返ります。書類や証拠の作成にかかる費用、現地調査や鑑定を行うことになった場合の費用は別に必要で、現地調査などは双方が折半するのが通例だとされています。
あっせん・調停・仲裁の違いと、弁護士との関係
3つの手続は、担当する人数と、出てくる結論の強さが違います。
あっせん。 建設業法はあっせん委員の仕事をこう定めています。
あつせん委員は、当事者間をあつせんし、双方の主張の要点を確かめ、事件が解決されるように努めなければならない。
調停。 3人の調停委員が担当し、案を作って示すところまで進みます。
審査会は、調停案を作成し、当事者に対しその受諾を勧告することができる。
仲裁。 3人の仲裁委員が判断を出します。ただし入口に条件があります。
「仲裁」を申請するためには、当事者間で「仲裁合意書」が作成されていることが必要です。
相手が同意していなければ仲裁は選べません。そして、弁護士を調べている人にとっていちばん大事なのがこの条文です。
仲裁委員のうち少なくとも一人は、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二章の規定により、弁護士となる資格を有する者でなければならない。
自分で弁護士を雇わなくても、仲裁の席には弁護士の資格を持つ人が必ず入ります。 あっせんと調停の担当委員も、法律・建築・土木の専門家から指名されます。申請書は国土交通省が記載例つきの手引きを公開しているので、本人で出すこともできます。手続はいずれも原則として非公開です。
向かない場面もあります。あっせんと調停は話し合いの手続なので、相手が席に着かなければ結論は出ません。仲裁は結論が出ますが、入口に相手の合意が要ります。建設業法は、紛争の性質上あっせんや調停に適当でないと認めるとき、または当事者が不当な目的でみだりに申請したと認めるときは、あっせんや調停を行わないと定めてもいます。
相手と一切連絡が取れない、詐欺を主張したい、といった場面では、消費生活センターや弁護士のほうが先になります。
契約書がないと、持ち込みにくくなります
申請に添える証拠について、国土交通省はこう書いています。
特に工事請負契約書は、最も基本的な証拠であり、請負契約に関する紛争であることを証するためにも必要ですので、必ず提出して下さい。
契約書は、主張を支える証拠であると同時に、そもそも請負契約の紛争であることを示す入場券でもあります。口約束と見積書だけで工事を進めてしまうと、ここで詰まります。契約書に何を書いてもらうかは解体工事の契約書にまとめました。工事のまえに戻れる段階なら、そちらを先にご覧ください。
! ここに注意
証拠として出すのは写しで足ります。契約書のほかに、注文書・請書・契約約款・設計図・現場写真が挙げられています。工事の途中で気になることがあったら、その日のうちに写真を撮って日付を残してください。あとから作れない証拠は、現場が更地になった時点で消えます。
工事のあとに出てくるトラブル
解体は、終わったあとに問題が見つかることがあります。行き先を整理しておきます。
追加請求が来た。 契約した相手との請負代金の話なので、審査会が扱う範囲です。まず契約書と見積書で、どこまでが約束だったのかを確かめてください。
廃材の行き先が分からない・完了報告が来ない。 建設リサイクル法は、工事が終わったら元請業者が発注者(工事を頼んだ人)へ書面で報告することを義務づけています。報告の中身が適正でないと思えるときは、都道府県知事へ申告できます。詳しくは解体で出た廃材はどこへ行くのかをご覧ください。
工事で車や物が壊れた。 契約した相手との間の話であれば、請負契約の実施をめぐる紛争として審査会に持ち込む余地があります。ただし、隣の家の車が傷ついた場合、その持ち主とあなたの間に契約はありません。壊した業者と持ち主の間にも契約はないので、審査会は使えません。この場合は、工事をした業者が入っている賠償の保険で対応できるかどうかが分かれ目になります。まず業者に、こうした損害に使える保険に入っているかを確認してください。
隣の家の工事だった。 審査会は使えません。
直接の契約関係にない元請・孫請間の紛争、近隣住民の方と工事の請負人の間で工事騒音が問題となっている紛争などは、契約当事者間の紛争ではありませんので、建設工事紛争審査会では取り扱えません。
騒音や振動には別の法律と別の窓口があります。隣の家の解体工事がうるさいときにまとめています。
訪問販売で契約してしまった。 契約そのものを解除したい場合は、消費者ホットライン188(局番なし)で最寄りの消費生活センターにつながります。断り方は訪問販売のリフォームを断る方法をご覧ください。
よくある質問
解体工事でもめたとき、最初にどこへ相談すればよいですか?
もめている相手が、自分が契約した業者かどうかで分かれます。契約した相手なら建設工事紛争審査会です。国土交通省と各都道府県に置かれた公的な機関で、工事の不具合や請負代金の未払いなど、工事請負契約の解釈や実施をめぐる紛争を扱います。契約していない相手、たとえば隣の家が頼んだ工事の騒音は、審査会では扱えません。市区町村の環境の窓口が担当です。どちらとも決めかねる場合は、国土交通省が建設業相談窓口ナビを公開していて、いくつかの質問に答えると通報や相談の先が確認できます。電話で聞きたい場合は建設業取引適正化センターが、相談先である行政機関や紛争処理機関を紹介すると案内しています。
建設工事紛争審査会を使うのに、いくらかかりますか?
あっせんを申請する場合、請求する事項の価額が100万円までなら申請手数料は1万円です。これとは別に、書類を送る費用として通信運搬費1万円を現金で預けます。調停は手数料2万円、通信運搬費3万円、仲裁は手数料5万円、通信運搬費5万円です。請求する額が大きくなると手数料も上がり、たとえば750万5,000円を請求するあっせんなら2万1,765円と国土交通省が計算例を示しています。額を決められないときは500万円として計算するとされています。第1回の審理の前に取り下げれば、手数料の半分が戻ります。通信運搬費も終了後に精算して余りは返ります。
弁護士に頼まないと使えませんか?
代理人を立てずに本人で申請できます。申請書の書き方は国土交通省が記載例つきの手引きを公開しています。むしろ、審査会の側に法律の専門家が入るしくみになっていて、建設業法は仲裁について、仲裁委員のうち少なくとも一人は弁護士となる資格を有する者でなければならないと定めています。あっせんや調停の担当委員も、法律・建築・土木の専門家から指名されます。もちろん弁護士に依頼することもできますが、まず自分で申請してみる余地は残されています。判断に迷うときは、管轄する審査会の事務局に電話で問い合わせてください。
あっせん・調停・仲裁は、どれを選べばよいですか?
話し合いの度合いと、結論の強さが違います。あっせんは、あっせん委員が双方の主張の要点を確かめて解決に努める手続です。調停は3人の調停委員が担当し、調停案を作って受け入れるよう勧めることができます。仲裁は3人の仲裁委員が判断を出す手続で、建設業法により仲裁法が適用されます。ただし仲裁を申請するには、相手との間で仲裁合意書が作られていることが必要です。相手が話し合いに応じる姿勢を見せているならあっせん、金額の隔たりが大きいなら調停、というのが素直な選び方になります。いずれの手続も原則として非公開です。
隣の家の解体工事がうるさいのですが、審査会に持ち込めますか?
持ち込めません。国土交通省は、直接の契約関係にない元請と孫請の間の紛争や、近隣住民と工事の請負人の間で工事騒音が問題となっている紛争などは、契約当事者間の紛争ではないので建設工事紛争審査会では取り扱えないと明記しています。隣の家の工事は、あなたが契約した工事ではないためです。騒音・振動については騒音規制法と振動規制法に基づく届出と基準があり、窓口は市区町村の環境の担当課になります。隣の家の解体工事への対処は別の記事にまとめています。
契約書を作ってくれない業者は、どこに言えばよいですか?
国土交通省の駆け込みホットラインが窓口です。建設業法違反に関する情報を受け付けていて、寄せられた情報は建設Gメンの調査の端緒や、許可をした行政庁への情報提供に使われるとしています。電話は0570-018-240で、情報収集のフォームも公開されています。ここは通報の窓口で、あなたと業者の間のもめごとを解決してくれる場所ではない点に注意してください。建設業法は、建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたときを指示の対象に挙げており、行政の側から業者へ働きかける道です。お金の解決を求めるなら建設工事紛争審査会、業者の行為を正してほしいなら駆け込みホットライン、と使い分けます。
まとめ
- 窓口は、相手との関係で決まります。 契約した相手かどうかが最初の分かれ目です
- 契約した業者との紛争=建設工事紛争審査会。 手数料は請求する額で決まり、あっせんがいちばん低い
- 第1回の審理の前に取り下げれば、手数料は半分戻ります
- 仲裁委員の少なくとも1人は弁護士の資格を持つ人です(建設業法第25条の19第3項)
- 管轄は相手の許可で決まります。 500万円未満の解体は許可がなくても請け負えるため、相手が許可を持っていなければ現場のある都道府県です
- 契約書は入場券です。 国土交通省は必ず提出するよう求めています
- 隣の家の工事は審査会では扱えません。 騒音は市区町村の環境の担当課へ
- 業者の行為を正してほしいときは駆け込みホットライン(0570-018-240)
工事に入る前の段階なら、解体工事の契約書で書面の中身をそろえておくのがいちばん効きます。契約より前の段取りは実家を解体するまえにやることにまとめています。
※本記事の制度情報は2026年8月11日時点で、e-Gov法令検索の原文と国土交通省の公表資料を確認したものです。手数料と窓口の連絡先は変わることがあります。申請の前に、管轄する建設工事紛争審査会の事務局にご確認ください。
参考情報(出典)
- 建設業法(e-Gov法令検索)(確認日 2026-08-11)
- 建設工事紛争審査会の概要(国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 建設工事紛争審査会で取り扱う事件(国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 紛争解決事例(中央建設工事紛争審査会・国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 建設工事紛争審査会の管轄区分(国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 紛争処理に要する費用(国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 紛争処理の申請方法(国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 建設業法違反の情報提供窓口(駆け込みホットライン)(国土交通省)(確認日 2026-08-11)
- 建設業に関する各種相談窓口(国土交通省・PDF)(確認日 2026-08-11)
- 建設リサイクル法質疑応答集(国土交通省・PDF)(確認日 2026-08-11)
家の補助金ナビ編集部
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