擁壁の検査済証——3つの法律に別々にあります。無いと「安全な擁壁」として自動では数えてもらえません
建築基準法、盛土規制法、都市計画法——擁壁の検査済証は、この3つの法律に別々にあります。交付する人も、交付される相手も、保管している役所の課も違います。
だから、建築の窓口で「うちの台帳にはありません」と言われても、それで無いと決まったことにはなりません。宅地造成の側に許可と検査の記録が残っている、という形が起こります。
この記事では、3つの検査済証がどう違うのか、無いときに何が起きるのか、どこでどう取り寄せるのかを、条文と自治体の公式ページで整理します。
先に結論
✓ ここが要点
- 擁壁の検査済証は3つの法律に別々にあります(建築基準法・盛土規制法・都市計画法)
- 探す前に決めるのは役所ではなく、その擁壁がどの法律で造られたかです
- 無い擁壁は、東京都ではがけとして数えられます。鉄筋コンクリート造でも同じです(渋谷区の案内)
- 無いままでも建てられる道は用意されています。ただし調査・離隔・造り替えのどれかが要ります
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お住まいの市区町村で使えるかは、郵便番号だけで確認できます
市区町村の制度と国の制度を1画面にまとめて表示します。外壁・外構・解体・介護など、工事の種類を切り替えて確認することもできます。
お住まいの市区町村の制度を調べる公式ページで確認した情報のみ(各項目に確認日つき)
検査済証は、3つの法律に別々にあります
まず条文で確かめます。建築基準法の検査済証は、完了検査について定めた第7条の第5項です。
検査実施者は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。
擁壁は建築物ではありませんが、第88条第1項が工作物への準用を定めていて、準用される範囲に「第七条から第七条の四まで」が含まれています。政令が指定しているのは高さが2メートルを超える擁壁です(擁壁の確認申請)。
2つめが盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の第17条第2項です。
都道府県知事は、前項の検査の結果、工事が第十三条第一項の規定に適合していると認めた場合においては、主務省令で定める様式の検査済証を第十二条第一項の許可を受けた者に交付しなければならない。
3つめが都市計画法の第36条第2項、開発許可を受けた工事の検査です。
都道府県知事は、前項の規定による届出があつたときは、遅滞なく、当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該工事が当該開発許可の内容に適合していると認めたときは、国土交通省令で定める様式の検査済証を当該開発許可を受けた者に交付しなければならない。
| 系統 | 根拠条文 | 交付する人 | 交付される相手 |
|---|---|---|---|
| 建築基準法(工作物の確認) | 7条5項(88条1項で擁壁に準用) | 検査実施者 | 建築主 |
| 盛土規制法(宅地造成の許可) | 17条2項 | 都道府県知事 | 許可を受けた者 |
| 都市計画法(開発許可) | 36条2項 | 都道府県知事 | 開発許可を受けた者 |
※ 表は横にスクロールできます
交付される相手が全部「工事をした人」です。 今その土地に住んでいる人ではありません。造成分譲地を買った、相続した、中古で買った——どの入り方でも、紙は自分のところに来ていない可能性があります。これが「探しても手元に無い」の正体です。
実務ではもっと細かく分かれます。松戸市は、構造耐力上安全な擁壁として次の系統を並べています。
・建築基準法による、検査済証を受けた擁壁 ・宅地造成等規制法第13条による検査済証の交付を受けた区域内の擁壁 ・都市計画法第36条による検査済証の交付を受けた区域内の擁壁 ・松戸市における宅地開発事業等に関する条例による承認を受け、事業完了確認書の交付を受けた区域内の擁壁 ・都市計画法施行法第7条の規定による事務(【旧】住宅地造成事業に関する法律による許可を受けた事務を含む)で検査済証の交付を受けた区域内の擁壁
市の条例による事業完了確認書という、名前の違う紙も並んでいます。「検査済証」という言葉だけで探すと、これを見落とします。
! ここに注意
確認済証と検査済証は別の紙です。 確認済証は工事を始める前に「この計画なら基準に適合している」と出るもの、検査済証は工事が終わったあとに「そのとおりに出来ている」と出るものです。確認済証だけあって検査済証が無い擁壁は実在します。着工前の紙が見つかっても、まだ半分です。
いつからある制度か——法律の年より前の擁壁には、ありません
3つの法律の年を並べます。
| 法律 | 法令番号 | 公布日 |
|---|---|---|
| 建築基準法 | 昭和25年法律第201号 | 1950年5月24日 |
| 宅地造成等規制法(現・盛土規制法) | 昭和36年法律第191号 | 1961年11月7日 |
| 都市計画法 | 昭和43年法律第100号 | 1968年6月15日 |
※ 表は横にスクロールできます
それより前に造られた擁壁には、交付されるはずの検査済証がありません。
ただし、年だけでは決まりません。盛土規制法は区域を指定して規制する仕組みなので、区域の外で行われた工事は許可の対象になりません。建築基準法の工作物確認は高さが2メートルを超える擁壁だけが対象です。法律ができたあとに造られた擁壁でも、そもそも手続きの対象外だった、という形はあり得ます。
古い書類が出てきたときの読み方も1つ。盛土規制法は2023年に名前と条文番号が変わりました。 手元の紙に「宅地造成等規制法第13条」と書いてあれば、それが今の第17条に当たります。旧法の条文はこうでした。
都道府県知事は、前項の検査の結果工事が第九条第一項の規定に適合していると認めた場合においては、国土交通省令で定める様式の検査済証を第八条第一項本文の許可を受けた者に交付しなければならない。
条番号が違うだけで、中身は同じ「都道府県知事が許可を受けた者に交付する検査済証」です。
無いと何が起きるか——東京都では、鉄筋コンクリート造でも「がけ」として数えられます
いちばん実害が出るのは、その敷地で家を建て替えるときです。
東京都渋谷区は、東京都建築安全条例第6条のがけの説明で、こう書いています。
また、鉄筋コンクリート造の擁壁であっても、検査済証のないものは同様の扱いを受けます。
「同様の扱い」とは、がけと同じ扱いです。見た目が立派なコンクリートの壁でも、紙が無ければ「土が崩れる斜面」と同じ側に数えられます。東京都北区の書き方はさらに直接的です。
維持管理が良好であっても検査済証がないと安全な擁壁とは判断されません。
北区は「安全な擁壁」の定義も置いています。
安全な擁壁とは、法による検査済証が交付された擁壁(建築課で確認ください)もしくは宅地造成等規制法や都市計画法に基づく開発行為による許可の検査済証が交付された擁壁(都市計画課で確認ください)であり、その後も維持管理が良好で安全上支障がないもので、構造的に安定していることを設計者等(一級建築士等)が証明できるものを言います。
紙と、その後の状態と、専門家の証明の3つがそろって「安全な擁壁」です。 どれか1つでは足りません。
審査の側で起きることは、東京都多摩建築指導事務所が書いています。
既存擁壁を調査して安全性が確認できなければ、建築確認審査に支障が生じるおそれがあります。安全の確認ができない擁壁は、新しく造り替えることをおすすめします。建築指導担当課の窓口までご相談ください。
がけとして数えられると、建物を離すか、建物の構造を変えるか、擁壁を造り替えるかを選ぶことになります。どれを選べるかは県の条例で違います(がけ条例と擁壁)。造り替えを選ぶ場合は、工事費に助成を出している市があります(擁壁の補助金)。
ただし、ここで詰むわけではありません。 順番は2つで、まず役所の台帳に記録が残っていないかを探す(次の3つの節)、それでも無ければ紙の代わりを立てる(この記事の後半「無いままで建てる道を、用意している自治体があります」)。手元に無いことと、記録が無いことは別です。
探す順番——まず手元、次に役所
東京都多摩建築指導事務所のパンフレットが、手順を3つに分けています。
- 建物を新築した当時の図面に記載がないか
- その土地や家屋を購入した際の資料に記載がないか
- 役所で調べる
3つめの中身も分かれています。
都市計画法の許可を受け、検査された擁壁かどうかは、開発指導担当課において開発登録簿を閲覧し、ご確認ください。・宅地造成等規制法の許可、検査については、開発指導担当課にご相談ください。・建築基準法の工作物の確認申請、検査済証の有無については建築指導担当課にご相談ください。
開発登録簿は、開発許可を出した役所が許可の内容と検査の結果を記録している帳簿です。閲覧も写しの交付も、法律で保障されています。 都市計画法第47条第5項です。
都道府県知事は、登録簿を常に公衆の閲覧に供するように保管し、かつ、請求があつたときは、その写しを交付しなければならない。
「請求があつたときは、その写しを交付しなければならない」——お願いではなく、役所の義務として書かれています。開発許可の造成地なら、ここが一番確実な入口です。
売買のときの重要事項説明書、造成分譲地なら分譲時のパンフレット——ここに造成の許可番号が残っていることがあります。番号が1つ分かれば、役所での特定が一気に速くなります。
擁壁そのものの傷み方を先に見ておきたい場合は、国土交通省のチェックシートで自分でも測れます(擁壁の危険度)。
窓口は、根拠法令ごとに分かれます
神戸市のFAQは、この一文から始まります。
擁壁は根拠となる法令により窓口が異なります。
そのうえで、都市計画法による開発許可は都市局都市計画課、宅地造成等規制法による許可は建設局防災課、建築基準法による確認は建築住宅局建築指導部建築調整課、と3つの窓口を並べています。同じ市役所の中で、階も庁舎も別です。
横浜市は、擁壁の安全性の問い合わせにこう答えています。
擁壁が安全かどうかは、当該擁壁の所有者等の維持管理にかかることですので、行政が確認したり保証することはできませんが、法的に手続がとられたものかは確認できます。
役所が答えられるのは「手続きの有無」までで、「安全かどうか」ではありません。 ここを取り違えて窓口へ行くと、期待した答えは返ってきません。手続きの記録を取ってきて、安全かどうかの判断は建築士に頼む——この2段構えになります。
自分の市の窓口が分からないときは、神戸市の擁壁FAQの分け方を持って行くと話が早くなります。課の名前も、いくつに分かれるかも市で違います。神戸市は3つ、北区は2つです。共通しているのは、根拠の法令で窓口が変わることです。
横浜市は、台帳の証明書を2種類出しています
「取り寄せられるのか」に、金額の付いた答えがある市の例です。横浜市は建築・開発に関する証明・閲覧についてのページで、2種類の台帳証明を案内しています。
1つめが建築確認申請台帳記載証明書です。
建築確認申請を受理した物件が確認になった建築物について、台帳に記載されている事項(確認番号、延べ面積、検査済発行有無の確認等)の証明書を取得できます。民間指定確認機関の物件についても証明書の発行ができます。手数料は1件300円です。
証明事項に検査済発行有無の確認が入っています。紙そのものの再発行ではなく、「検査済証が出ていたかどうか」を市が証明する形です。原本を紛失していても、こちらで代わりが立ちます。
2つめが宅地造成の側です。
許可になった宅地造成等規制法の許可について、台帳に記載されている事項(許可番号、宅地面積等)の証明書を取得できます。手数料は1件300円です。
閲覧だけなら、もっと手前の資料もあります。
計画の概要や配置図を記した「建築計画概要書」(昭和46年1月以降の物件)を閲覧することができます。
年代で経路が分かれるところも書かれています。
検査の状況については、平成11年5月1日以降に受付した物件については「処分の概要書」で検査状況の確認ができますが、それ以前の物件については、建築確認申請台帳記載証明書(1通300円)を取得することによって確認ができます。
インターネットからの申請も令和6年10月23日から始まっています。対象は「平成6年度以降に建築確認申請がされた物件が対象です。」で、費用は「手数料(発行手数料300円+送料110円)」、支払い確認後3営業日前後で発送されます。それ以前の物件は窓口での発行になります。
! ここに注意
横浜市の台帳証明は、擁壁について「どちらの台帳か」を先に決める必要があります。 建築確認申請台帳記載証明書の対象は建築物と書かれていて、工作物である擁壁がどちらの記録に載っているかは擁壁ごとに違います。横浜市自身、擁壁の確認先については宅地審査部各方面の担当に相談するよう案内しています。手数料と様式の話は、そのあとです。
窓口は横浜市役所の中にあります。証明・閲覧の担当は建築局建築指導部情報相談課で、
情報相談課(市庁舎2階よこはま建築情報センター)で閲覧・縦覧できる資料
と案内されています。電話は045-671-4503、開庁時間は平日の午前8時45分から午後5時00分までです。
! ここに注意
同じ書類が「台帳記載証明書」と「台帳記載事項証明書」の2通りで書かれています。 横浜市の証明ページは「建築確認申請台帳記載証明書」、電子申請の案内は「建築確認申請台帳記載事項証明書の電子申請の流れ」と、市の中でも表記が割れています。検索して出てこないときは、もう一方の言い方でも探してみてください。
金額も様式も市で違います。お住まいの市の「建築・開発に関する証明」のページを同じ言葉で探してみてください。
無いままで建てる道を、用意している自治体があります
福岡市は、検査済証がない擁壁の扱いを平成22年4月から運用しています。
特に、検査済証がない擁壁の代替措置として、市民の皆様へ維持管理の重要性や危険な擁壁についての理解を促す方法を採用するなど「長期的な視点で災害に強い安全・安心のまちづくりを目指す」という趣旨に基づき、弾力的な運用方法としております。
福岡市の資料は、検査済証が何を担保しているのかも書いています。
擁壁構造体断面や支持地盤、裏込め材、排水環境など外から見えない部分が、築造当時適切に設計・施工・監理されたと判断するものです。
裏込め材や支持地盤は、完成後には掘り返さないと見えません。 だから当時の書類が代わりを務めています。逆に言えば、見えない部分を別の方法で確かめられれば、紙が無くても前に進めます。福岡市はその代替として、既存擁壁外観状況チェックシートの提出、注意喚起チラシの配布、自己所有なら維持管理についての確約という組み合わせを用意しています(別紙2-1・2-2の様式は市が公開しています)。
福岡県も、県内向けのチラシで同じ順番を書いています。
これら以外の場合には、設計図書や工事写真、現地調査、構造計算等により安全性を確認してください。
そのうえで、確認ができない場合の逃げ道を4つ並べています。
安全性の確認ができない場合でも、裏面の②~④のいずれかの対応策を取れば建築が可能です。
②が擁壁の高さの2倍を超えて離す、③が土留施設等の設置または基礎を安息勾配(土が自然に崩れ落ちて安定する角度)の内側まで下げる、④が擁壁の造り替えです。福岡県のチラシ(PDF)に図つきで載っています。
愛知県は、条例のただし書きに当たる「知事が定める場合」として、こういう擁壁を挙げています。
イ 鉄筋コンクリート造又は間知石練積み造その他これらに類する構造の擁壁で、その高さが5m以下であって、有害な沈下、はらみ出し、ひび割れ等がなく安全であることを一級建築士又はこれと同等の者が認めたもの
間知石練積み造は、四角く加工した石を積み、裏側をコンクリートで固めた擁壁のことです。検査済証ではなく、一級建築士等の判断で通る道が明文で置かれています。 高さ5メートル以下という条件つきですが、書類が消えた擁壁にとっては現実的な出口です。
自分の市ではどう確かめるか
ここに挙げたのは3つの自治体の例です。同じ扱いを持っているかは市で違うので、次の順番で当たってください。
- 市名+既存擁壁、または市名+敷地の安全確認で探す(福岡市の資料名がこの言い方です)
- 見つからなければ、市の確認申請の手引きを開く(既存擁壁の扱いは手引きに載っていることがあります)
- それでも出てこなければ、建築指導の窓口に「検査済証がない擁壁の扱いはありますか」と聞く
なお、上の④にあたる造り替えを選ぶ場合、工事費に助成を出している市があります。横浜市は建築基準法や盛土規制法の手続きが要る工事かどうかで制度そのものを分けていて、上限額が変わります(擁壁の補助金)。造り替えを決める前に、自分の市に制度があるかを見ておくと順番を間違えません。
造り替える擁壁の高さが2メートルを超えるなら、工作物の確認申請が別に要ります(擁壁の確認申請)。新しく造ったぶんには、こんどは検査済証が出ます。 次の持ち主が同じことで困らないように、交付されたら土地の書類と一緒に保管してください。
紙があっても、それだけでは足りません
最後に、逆方向の話を書いておきます。検査済証が出てきたからといって、そこで終わりにはなりません。
福岡県の書き方は条件つきです。
既存擁壁が、建築基準法の工作物の確認・検査済証や都市計画法の開発許可を受けて設置された宅地用の擁壁であり、かつ、常時適法な状態に維持され、著しい劣化等がなければ、安全と判断できます。
「かつ、常時適法な状態に維持され、著しい劣化等がなければ」——ここが後半の条件です。愛知県の解説はもっとはっきり書いています。
ただし、許可又は確認を受けたものであつても、当該擁壁が有害な沈下、はらみ出し、ひび割れ等の経年劣化が無いことを、設計者が確認すること。
松戸市も同じ立て付けです。
既設の擁壁については、これら法令に基づく許認可、確認・検査状況のほか、管理状況を確認し、総合的に構造耐力上の安全が確認されたものであること。
紙は築造時点の証明で、そのあと何十年ぶんの傷みは別に見られます。ふくらみ、ひび割れ、水抜き穴の詰まり——ここは自分でも見られます(擁壁の危険度)。傷んでいたときに誰が直すのかは、擁壁は誰の責任かにまとめています。
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よくある質問
擁壁の検査済証は、どこの役所に行けばありますか?
根拠になっている法律で分かれます。神戸市はFAQで「擁壁は根拠となる法令により窓口が異なります。」と書き、都市計画法の開発許可は都市計画課、宅地造成等規制法の許可は防災課、建築基準法の確認は建築調整課と、3つの窓口を並べています。東京都北区も、建築基準法による検査済証は建築課、開発行為の許可による検査済証は都市計画課と案内しています。つまり最初に決めるのは「どの役所か」ではなく「その擁壁がどの法律で造られたか」です。分からないまま行くと、窓口をたらい回しされます。まず擁壁の高さと、土地が宅地造成等工事規制区域や開発許可を受けた造成地に入っているかを控えてから行ってください。
擁壁の検査済証は、いつからある制度ですか?
法律ごとに違います。建築基準法は昭和25年法律第201号で1950年5月24日公布、宅地造成等規制法(現在の盛土規制法)は昭和36年法律第191号で1961年11月7日公布、都市計画法は昭和43年法律第100号で1968年6月15日公布です。それより前に造られた擁壁には、そもそも交付されるはずの検査済証がありません。ただし年だけでは決まりません。盛土規制法は区域を指定して規制する仕組みなので区域外の工事は許可の対象外ですし、建築基準法の工作物確認は高さが2メートルを超える擁壁だけが対象です。法律ができたあとに造られた擁壁でも、手続きの対象外だったという形はあり得ます。
検査済証がないと、家は建てられませんか?
建てられなくなるわけではありませんが、審査の進み方が変わります。東京都多摩建築指導事務所は「既存擁壁を調査して安全性が確認できなければ、建築確認審査に支障が生じるおそれがあります。」と書いています。福岡県は、検査済証などがない場合について、設計図書や工事写真、現地調査、構造計算等により安全性を確認してくださいと案内し、それでも確認できない場合でも、擁壁から一定距離を離す、土留施設等を設ける、擁壁を造り替えるといった対応策を取れば建築が可能だとしています。愛知県は、鉄筋コンクリート造や間知石練積み造で高さ5メートル以下、有害な沈下・はらみ出し・ひび割れ等がなく安全であることを一級建築士等が認めたものを、知事が定める場合として扱っています。
検査済証がない擁壁は、危ないということですか?
危険だと判定されたわけではなく、外から見えない部分を確かめる手がかりが無いという意味です。福岡市は検査済証の役割を「擁壁構造体断面や支持地盤、裏込め材、排水環境など外から見えない部分が、築造当時適切に設計・施工・監理されたと判断するものです。」と説明しています。裏込め材や支持地盤は完成後には掘り返さないと見えないので、当時の書類が代わりを務めています。ただし行政の運用としては厳しく働きます。東京都北区は「維持管理が良好であっても検査済証がないと安全な擁壁とは判断されません。」と書いています。
横浜市で擁壁の検査済証を取り寄せるには、いくらかかりますか?
横浜市の建築確認申請台帳記載証明書は1件300円です。証明事項に「検査済発行有無の確認等」が挙がっていて、民間指定確認検査機関の物件についても発行できるとされています。宅地造成の許可を受けた擁壁については、別に宅地造成工事許可申請台帳記載証明書があり、こちらも1件300円で、証明事項は許可番号・宅地面積等です。インターネットでの申請も令和6年10月23日から始まっていて、対象は平成6年度以降に建築確認申請がされた物件、手数料は発行手数料300円に送料110円が加わります。ただし擁壁がどちらの台帳に載っているかは擁壁ごとに違うので、横浜市は擁壁の確認先について宅地審査部各方面の担当に相談するよう案内しています。
手元に何も書類がありません。どこから探せばよいですか?
東京都多摩建築指導事務所が3つ挙げています。建物を新築した当時の図面に記載がないか確認する、その土地や家屋を購入した際の資料に記載がないか確認する、そして役所で調べる、の順です。役所側は、都市計画法の許可を受け検査された擁壁かどうかは開発指導担当課で開発登録簿を閲覧し、宅地造成等規制法の許可・検査は開発指導担当課、建築基準法の工作物の確認申請・検査済証の有無は建築指導担当課に相談する、と分かれています。売買のときの重要事項説明書や、造成分譲地なら分譲時のパンフレットに造成の許可番号が残っていることがあります。
検査済証があれば、それだけで安全ということになりますか?
なりません。福岡県は、工作物の確認・検査済証や開発許可を受けて設置された宅地用の擁壁であっても、安全と判断できるのは「常時適法な状態に維持され、著しい劣化等がなければ」という条件つきだと書いています。愛知県の解説はさらに踏み込んで、許可又は確認を受けたものであっても、擁壁に有害な沈下・はらみ出し・ひび割れ等の経年劣化が無いことを設計者が確認することとしています。松戸市も、既設の擁壁については許認可や検査状況のほか管理状況を確認し、総合的に構造耐力上の安全が確認されたものであることを求めています。紙は出発点で、そのあとの傷み方は別に見られます。
まとめ
- 擁壁の検査済証は3つの法律に別々にあります(建築基準法7条5項・盛土規制法17条2項・都市計画法36条2項)
- 交付される相手は全部「工事をした人」です。 今の所有者の手元に無いのは、この構造のためです
- 松戸市は事業完了確認書など、名前の違う紙も同格に並べています
- 確認済証と検査済証は別。着工前の紙が見つかっても、まだ半分です
- 無い擁壁は、渋谷区の案内では鉄筋コンクリート造でもがけと同様の扱いです。福岡県は別の方法での確認を求めています
- 北区は維持管理が良好でも検査済証がなければ安全な擁壁とは判断しないと書いています
- 探す順番は当時の図面 → 購入時の資料 → 役所。役所は法令ごとに窓口が分かれます
- 横浜市の建築確認申請台帳記載証明書は1件300円で、検査済発行有無の確認が証明事項です
- 福岡市・福岡県・愛知県は、調査・離隔・土留施設・造り替えで前に進む道を明文で置いています
- 紙があっても、その後の劣化は別に見られます(福岡県・愛知県・松戸市)
擁壁を新しく造るときの手続きは擁壁の確認申請に、県ごとの建築制限はがけ条例と擁壁に、工事にお金が出る市があるかは擁壁の補助金にまとめています。市区町村別の外構まわりの制度はブロック塀撤去補助のDBから探せます。
※本記事の制度情報は2026年8月13日時点で、e-Gov法令検索の原文と各自治体の公式ページを確認したものです。証明書の名称・手数料・窓口は自治体ごとに違い、変わることもあります。手続きの前に、お住まいの市の建築指導・宅地造成の窓口にご確認ください。
参考情報(出典)
- 建築基準法(e-Gov法令検索)第7条・第88条(確認日 2026-08-13)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(e-Gov法令検索)第17条(確認日 2026-08-13)
- 都市計画法(e-Gov法令検索)第36条(確認日 2026-08-13)
- 建築・開発に関する証明・閲覧について(横浜市)(確認日 2026-08-13)
- インターネットでの建築確認申請台帳記載証明書の取得方法について(横浜市)(確認日 2026-08-13)
- Q4-1 擁壁が安全かどうかはどこで確認できますか(横浜市)(確認日 2026-08-13)
- 擁壁の確認済証・検査済証が発行されているか教えてください。(神戸市)(確認日 2026-08-13)
- 建築敷地周辺に高低差がある場合(東京都北区)(確認日 2026-08-13)
- 東京都建築安全条例第6条に規定するがけについて(東京都渋谷区)(確認日 2026-08-13)
- 既存擁壁の安全確保について(東京都多摩建築指導事務所)(確認日 2026-08-13)
- 敷地等の安全確認に関する取り扱い~既存擁壁・がけ条例への対応について~(福岡市)(確認日 2026-08-13)
- 既存擁壁に近接する土地で建物を計画している皆様へ(福岡県)(確認日 2026-08-13)
- がけ付近の建築物の敷地等について(松戸市)(確認日 2026-08-13)
- 愛知県建築基準条例・同解説 第8条(名古屋市掲載)(確認日 2026-08-13)
家の補助金ナビ編集部
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