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がけ条例と擁壁——当たり始める高さは2メートルの都県と3メートルの県があります。擁壁を設ければ済む形と、距離を保てという形も別ものです

公開 2026年8月13日最終更新 2026年8月13日執筆 家の補助金ナビ編集部

東京都は2メートル、神奈川県は3メートル——同じ「がけ条例」でも、当たり始めるがけの高さが違います

条例のあだ名だけが全国共通で、中身はそろっていません。求められることも、安全な擁壁を設けよという都県と、がけから離せという県に分かれます。ネットで読んだ数字をそのまま自分の土地に当てはめると、要る工事そのものが変わります。

ここでは、がけ条例の根拠がどこにあるのか、都県で何がどう違うのか、擁壁を造る以外にどんな道があるのかを、条文と自治体の公式資料で並べます。

先に結論

✓ ここが要点

  • 「がけ条例」という名前の法律はありません。 建築基準法40条を根拠に、都道府県や市が条例で上乗せしたものです
  • 当たり始める高さは東京都・千葉県・静岡県・愛知県が2メートル超、神奈川県が3メートル超、福岡市は敷地の高低差3メートル超
  • 求められることも、擁壁を設けよという形と、距離を保てという形に分かれます
  • 擁壁が建っていても、東京都渋谷区は検査済証のないものと大谷石・コンクリートブロックの土留めをがけと同等に扱います
  • 費用を負担するのは建てる側です。 隣の土地のがけでも変わりません(条例に金額の定めはありません)

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「がけ条例」という名前の法律はありません

まず法律の側から。建築基準法第19条第4項は、こう定めています。

建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

短い1行で、具体的な数字は入っていません。数字を入れているのは条例で、その根拠が第40条です。

地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模に因り、この章の規定又はこれに基く命令の規定のみによつては建築物の安全、防火又は衛生の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。

「その地方の気候若しくは風土の特殊性」に応じて上乗せしてよい、という条文です。だから地域ごとに違うのが仕様であって、ばらばらなのは事故ではありません。東京都北区の説明が、この関係をそのまま書いています。

法第40条に基づく、東京都建築安全条例(以下「条例」という)第6条(がけ)では、高さ2メートルを超え、かつ傾斜2分の1こう配を超える「がけ」に近接して建築物を建てる場合、建築物の安全性を確保するため具体的な規制が付加されています。

「2分の1こう配」は、高さ1に対して水平2の傾きです。この線をこえて上に出ている部分だけを、がけの高さ(がけ高)として数えます。

呼び方も割れています。ひらがなで「がけ条例」、漢字で「崖条例」——検索するときは両方で当たってみてください。条例の名前も条番号もそろっていません。東京都は建築安全条例第6条、千葉県と福岡市は建築基準法施行条例、静岡県・愛知県・神奈川県は建築基準条例。ここに挙げた6つだけで、条例の名前が3通り、条番号が6通りに分かれます。

当たり始める高さは、2メートルの都県と3メートルの県があります

条文を並べます。東京都建築安全条例第6条第2項。

高さ二メートルを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の二倍以内のところに建築物を建築し、又は建築敷地を造成する場合は、高さ二メートルを超える擁壁を設けなければならない。

千葉県建築基準法施行条例第4条第1項。

がけ(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外の土地で高さ2メートルを超えるものをいう。以下同じ。)の上にあつてはがけの下端から当該がけの高さの1.5倍、がけの下にあつてはがけの上端から当該がけの高さの2倍に相当する距離以内の場所に居室を有する建築物を建築してはならない。

居室は、人が長い時間すごす部屋のことです。居間・寝室・台所などが当たり、物置・便所・浴室は当たりません。千葉県の条文は、居室のある建物だけを止めています。

静岡県建築基準条例第10条。

第10条 がけの高さ(がけの下端を通る30度の勾配の斜線をこえる部分について、がけの下端からその最高部までの高さをいう。以下同じ。)が2メートルをこえるがけの下端からの水平距離ががけの高さの2倍以内の位置に建築物を建築する場合は、がけの形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて安全な擁壁を設けなければならない。

愛知県建築基準条例第8条第1項。

第8条 建築物の敷地が、高さ2mを超えるがけに接し、又は近接する場合は、がけの上にあつてはがけの下端から、がけの下にあつてはがけの上端から、建築物との間にそのがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。

神奈川県建築基準条例第3条第1項。

第3条 高さ3メートルを超えるがけの下端(がけの下にあっては、がけの上端)からの水平距離が、がけの高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合(特別警戒区域内において居室を有する建築物を建築する場合を除く。)には、がけの形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて、安全な擁壁を設けなければならない。

文中の特別警戒区域は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律で指定される土砂災害特別警戒区域のことで、そちらに入っている場合は別の規制が当たります。

福岡市は、条例の中身を市の資料でこう案内しています。

さらに、敷地の高低差が3mを超える場合は、福岡市建築基準法施行条例第5条(以下「がけ条例」という)の規定により、擁壁から決められた距離をあけて建物を建築するか「がけ地」に対する安全性を確認する必要があります。

表にすると、そろっていないことがはっきりします。

自治体 条文 「がけ」の傾き 当たり始める高さ 制限される範囲
東京都 建築安全条例6条 2分の1こう配を超える部分 2メートルを超える 下端から がけ高の2倍以内
千葉県 建築基準法施行条例4条 30度を超える 2メートルを超える がけ上=下端から1.5倍/がけ下=上端から2倍
静岡県 建築基準条例10条 30度の勾配の斜線をこえる部分 2メートルをこえる 下端から2倍以内
愛知県 建築基準条例8条 30度を超える 2メートルを超える がけ上=下端から/がけ下=上端から 2倍
神奈川県 建築基準条例3条 30度をこえる(2条の3のかっこ書き) 3メートルを超える 下端(上端)から2倍以内
福岡市 建築基準法施行条例5条 ——(市の資料は高低差で説明) 敷地の高低差3メートルを超える 条例が定める距離

※ 表は横にスクロールできます

高さの線だけでなく、傾きの線も違います。東京都は2分の1こう配(高さ1に対して水平2)を超える部分をがけ高に数えます。角度にすると約26.6度で、30度を超える傾斜地を「がけ」とする県より、ゆるい斜面から当たります。同じ斜面でも、東京都ではがけ、千葉県ではがけでない、という組み合わせが起こります。

表の最後の1行だけ市になっているのは、市が独自に条例を持っていることがあるからです。自分の県がこの6つに無い場合、そして自分の市が政令指定都市や中核市の場合は、この記事の最後の節(自分の県の条例を探す順番)から入ってください。 上の数字を自分の土地に当てはめる前に、どの条例が当たるかを決めるほうが先です。

求められることも、同じではありません——擁壁を設ける形と、距離を保つ形

条文の末尾をもう一度見比べてください。

  • 東京都・静岡県・神奈川県=擁壁を設けなければならない
  • 千葉県=居室を有する建築物を建築してはならない
  • 愛知県=2倍以上の水平距離を保たなければならない

愛知県と千葉県は、原則が距離のほうにあります。松戸市は千葉県の条例を運用する側として、目安をこう書いています。

・がけ上は高さの1.5倍超離す ・がけ下は高さの2倍超離す

同じ「がけ条例に当たった」でも、次にやることが逆向きになります。 東京都なら擁壁を造る話から始まり、愛知県なら建物の配置を引く話から始まります。土地の広さに余裕がなければ、距離型のほうが厳しく効きます。逆に狭い土地では、擁壁型のほうが工事費で効きます。擁壁の工事にお金を出している市があるかは、先に見ておくと選び方が変わります(擁壁の補助金)。

擁壁があっても、条例の上では「無い」ことがあります

ここが実務でいちばん食い違うところです。静岡県の解説は、対象になるがけの判断についてこう書いています。

自然がけであるか否か、擁壁の有無、敷地の内外については問わない

まず「がけかどうか」を決め、擁壁の話はそのあとという順番です。擁壁が建っているから対象外、にはなりません。

では、どんな擁壁なら「安全な擁壁」として数えられるのか。東京都渋谷区の案内が、数えられないほうを名指ししています。

大谷石やコンクリートブロックなどで造られた土留めは、がけと同等の扱いを受けます。

同じ資料は、鉄筋コンクリート造の擁壁であっても検査済証のないものは同様の扱いを受けると続けています。見た目ではなく、基準に適合していることを示せるかどうかで分かれます。書類の探し方と、無いときにどうするかは擁壁の検査済証にまとめました。

擁壁なのか塀なのかで迷うときの見分け方も、東京都多摩建築指導事務所が示しています。コンクリートブロックの高さまで土が盛られていれば増し積み擁壁、土が盛られていなければ擁壁ではなく塀、という切り方です(塀のほうの決まりはブロック塀と建築基準法)。

擁壁そのものの傷み方を先に見ておきたい場合は、国土交通省のチェックシートで自分でも測れます(擁壁の危険度)。増積みや2段になっている擁壁は、そこでも点数を付ける前に対象外になります。条例の側でも、基準に適合した擁壁として数えてもらいにくい形です。

離す以外の道——緩和はただし書きに書いてあります

条文の本体だけを読むと逃げ場が無いように見えますが、ここに挙げた条例はどれもただし書きを持っています。「がけ条例の緩和」と呼ばれるのは、この部分です。

千葉県建築基準法施行条例第4条第1項は、4つの例外を置いています。がけ下で主要構造部を鉄筋コンクリート造にして、窓やドアからの土砂の流入を防ぐ壁等を設けるとき、がけと建築物の間に安全上支障のない塀等を設置するとき、建築物の位置ががけから相当の距離にあって安全であるとき、がけの形状及び土質により崩壊のおそれがないとき。そして3つめがこれです。

三 建築物を建築する場合において、構造耐力上安全な擁壁が設置されているとき。

擁壁を設けたときは、その構造にも条件が付きます。

一 高さ5メートルを超える擁壁は、鉄筋コンクリート造であること。

神奈川県は、条文の第2項がそのまま適用除外の規定です。

2 前項の規定は、がけの上に建築物を建築する場合において、当該建築物の基礎ががけに影響を及ぼさないとき、又はがけの下に建築物を建築する場合において、当該建築物の主要構造部(がけくずれによる被害をうけるおそれのない部分を除く。)を鉄筋コンクリート造とし、又はがけと当該建築物との間に適当な流土止めを設けたときは、適用しない。

がけの上なら基礎を深くしてがけに影響を及ぼさない形にする、がけの下なら建物側を鉄筋コンクリート造にするか流土止めを置く。流土止めは、崩れてきた土をがけと建物の間で受け止める壁で、擁壁とは役割が違います。擁壁を造らずに済ませる道が、条文の中に置かれています。

神奈川県には、がけの高さから除いてよい部分の規定もあります。

(2) がけの上部の盛土の部分で、高さが2.5メートル以下、斜面のこう配が45度以下であり、かつ、その斜面をしば又はこれに類するものでおおったもの

条例のただし書きと同じ考え方を、住民向けに図で整理している県もあります。福岡県のチラシは、擁壁の安全性が確認できない場合でも、離す・土留施設を設ける・造り替えるのいずれかを取れば建築が可能だとして、それぞれを断面図で示しています(福岡県のチラシ・PDF)。

条文を読むより、図のほうが自分の土地に当てやすいはずです。中身は擁壁の検査済証で条文と並べて説明しています。

なお、高さが2メートルを超える擁壁を新しく造るなら、建築基準法の工作物確認申請が別に要ります(擁壁の確認申請)。条例をクリアする手段が、そのまま次の手続きの入口になります。

「再建築不可」とは別の話です

がけ条例に当たると建て替えられなくなる、と読まれることがありますが、そうではありません。ここまで見たとおり、条例はどれもただし書きを持っています。

不動産の広告で使われる再建築不可は、別の条文の話です。建築基準法第43条第1項がこう定めています。

建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。

道路に2メートル以上接しているか——これが接道義務で、満たさない土地が再建築不可物件と呼ばれます。がけ条例は、がけとの距離や擁壁の話です。同じ土地で両方が当たることはありますが、別々に確かめる必要があります。

もう1つよく混ざるのが既存不適格です。規定ができる前から建っていたものには、その規定を当てない——建築基準法第3条第2項がそう定めています。条文と、違反との違いはブロック塀と建築基準法にまとめました。擁壁についても、第3条は第88条第1項で工作物に準用されるので同じように当たります。

擁壁で押さえておきたいのは、この規定が守っているのは「いま建っているもの」だけという点です。建て替えや新築のときは新しい建築なので、そのときの基準で見られます。「今まで何も言われなかったのに、建て替えの相談に行ったら擁壁の話になった」というのは、この切り替わりです。既存不適格は「違反ではない」という意味で、「がけ条例の審査を通る」という意味ではありません。

義務を負うのは、建てる側です——隣地のがけでも

先に金額の話をしておきます。がけ条例そのものは、工事費についてひとことも書いていません。 条文が決めているのは距離・構造・排水で、いくらかかるかは擁壁の高さ・長さ・種類と、選んだ対応(離す/建物側を鉄筋コンクリート造にする/流土止め/造り替え)で変わります。この記事で相場を出さないのは、公式の一次情報が無いからです。

決まっているのは、誰が払うかのほうです。条文の主語をもう一度見てください。建築する人、または建築物の敷地です。擁壁の所有者に工事をさせる規定は、がけ条例の中にありません。 費用負担も、そのまま建てる側の見込みに入ります。

隣の土地のがけでも同じです。愛知県の解説はこう書いています。

自己の敷地外にあるがけも対象となり、自己の敷地とがけの間に道路や他の人が所有する敷地がある場合については、それらを含めて一体のがけとみなす。

道路をはさんでいても一体のがけとみなされます。福岡市の取り扱いフローも、自己所有の擁壁と隣地所有の擁壁で欄を分けたうえで、隣地所有の場合は建築主へ注意喚起チラシを配ることや、既存擁壁に構造上不利な影響を与えない基礎にすることを、建てる側の対応として並べています。

建てたい人が動かないと話が進まない——これががけ条例の構造です。もっとも、崩れて損害が出たときの賠償は別の仕組みで、民法第717条が占有者と所有者の順で責任を置いています(擁壁は誰の責任か)。義務の向きが逆になるので、混ぜずに考えてください。

工事費に助成を出している市もあります。横浜市は建築基準法や盛土規制法の手続きが要る工事かどうかで制度を分けていて、上限額が変わります(擁壁の補助金)。がけ地から住まいごと移るための国のメニューは別立てです(がけ地近接等危険住宅移転事業)。

自分の県の条例を探す順番

  1. 「都道府県名+建築基準条例」または「都道府県名+建築基準法施行条例」で探す(名前が2通りあります)
  2. 目次からがけの付いた条を開く(条番号は第3条・第4条・第8条・第10条とばらばらです)
  3. 市が独自の条例を持っていないかを確かめる

3つめを飛ばすと、読んだ条文がそもそも自分の土地に当たりません。神奈川県建築基準条例の解説は、冒頭でこう断っています。

横浜市、川崎市、横須賀市、相模原市、鎌倉市、厚木市、平塚市、小田原市、秦野市、茅ヶ崎市及び大和市については、独自に建築基準条例を制定しているので、この条例の適用はない。

神奈川県だけで11市が県条例の外にあります。横浜市に土地を持っている人が県条例の3メートルを当てはめると、判断を間違えます。

断り方も県で違います。静岡県の解説は市の名前を並べるかわりに、こう書いています。

※この取扱いは静岡県が特定行政庁となる建築物にのみ適用す

特定行政庁(建築行政を担当する市や県の部署)が自分の市なのか県なのかは、条文を読んでも分かりません。市の建築指導の窓口に「うちはどの条例ですか」と聞くのが、いちばん速い確認になります。

解説資料を公開している自治体なら、条文より先にそちらを読むほうが早いです。静岡県建築基準条例第10条の解説(PDF)は図と審査取扱いつき、愛知県建築基準条例・同解説(名古屋市掲載・PDF)はがけの高さの数え方を図で示しています。神奈川県は条例全体の解説(PDF)、千葉県の運用は松戸市の資料(PDF)に条文の抜粋つきでまとまっています。

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よくある質問

がけ条例は、何メートルのがけから当たりますか?

自治体で違います。東京都建築安全条例第6条第2項は高さ2メートルを超えるがけ、千葉県建築基準法施行条例第4条は高さ2メートルを超えるもの、静岡県建築基準条例第10条は2メートルをこえるがけ、愛知県建築基準条例第8条は高さ2メートルを超えるがけです。一方で神奈川県建築基準条例第3条は高さ3メートルを超えるがけからで、福岡市は敷地の高低差が3メートルを超える場合に同市建築基準法施行条例第5条が当たると案内しています。傾きの基準も分かれていて、東京都は2分の1こう配を超える部分をがけ高に数え、千葉県・静岡県・愛知県・神奈川県は30度を超える傾斜を「がけ」としています。2分の1こう配は角度にすると約26.6度なので、東京都はゆるい斜面から当たります。

「がけ条例」という法律はどこにありますか?

その名前の法律はありません。建築基準法第40条が、地方公共団体は条例で建築物の敷地・構造・建築設備に関して安全上必要な制限を附加できると定めていて、これを根拠に都道府県や市が条例を作っています。東京都は東京都建築安全条例第6条、千葉県は建築基準法施行条例第4条、静岡県は建築基準条例第10条、愛知県は建築基準条例第8条、神奈川県は建築基準条例第3条、福岡市は建築基準法施行条例第5条です。条例の名前も条番号もそろっていません。加えて建築基準法第19条第4項が、建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合には擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならないと定めていて、条例が当たらない場合でもこちらは当たります。

擁壁があれば、がけ条例は当たりませんか?

擁壁の中身によります。静岡県の解説は、対象となるがけについて「自然がけであるか否か、擁壁の有無、敷地の内外については問わない」と書いています。まずがけかどうかを判断し、そのうえで安全な擁壁があるかを見る順番です。東京都渋谷区は「大谷石やコンクリートブロックなどで造られた土留めは、がけと同等の扱いを受けます。」とし、さらに鉄筋コンクリート造の擁壁であっても検査済証のないものは同様の扱いを受けると案内しています。つまり物としての擁壁ではなく、基準に適合していることを示せる擁壁かどうかで分かれます。

擁壁の工事費は、がけの持ち主と自分のどちらが持つのですか?

がけ条例が義務を課しているのは、建てる側です。条文の主語は建築する人や建築物の敷地で、擁壁の所有者に工事をさせる規定はがけ条例の中にありません。愛知県の解説は「自己の敷地外にあるがけも対象となり、自己の敷地とがけの間に道路や他の人が所有する敷地がある場合については、それらを含めて一体のがけとみなす。」としています。隣の土地のがけでも、建てる側が対策を求められる形です。ただし擁壁が崩れて損害が出たときの賠償は民法第717条の話で、こちらは占有者と所有者の順で責任が置かれています。ここは別の仕組みなので混ぜずに考えてください。

擁壁を造る以外に、条例をクリアする方法はありますか?

ただし書きに書かれています。千葉県建築基準法施行条例第4条第1項は4つの例外を置いていて、がけ下でも主要構造部を鉄筋コンクリート造にして、窓やドアからの土砂の流入を防ぐ壁等を設けるとき、がけと建築物の間に安全上支障のない塀等を設置するとき、建築物の位置ががけから相当の距離にあるとき、構造耐力上安全な擁壁が設置されているとき、がけの形状及び土質によりがけの崩壊のおそれがないときです。神奈川県建築基準条例第3条第2項も、がけ上ならその建築物の基礎ががけに影響を及ぼさないとき、がけ下なら主要構造部を鉄筋コンクリート造とするか適当な流土止めを設けたときは適用しないとしています。松戸市は距離の目安を、がけ上は高さの1.5倍超、がけ下は高さの2倍超と示しています。

静岡県と愛知県のがけ条例は、どこが違いますか?

求められることが違います。静岡県建築基準条例第10条は、がけの高さが2メートルをこえるがけの下端からの水平距離ががけの高さの2倍以内の位置に建築物を建築する場合に、がけの形状・土質・建築物の位置や構造に応じて安全な擁壁を設けなければならないという形です。愛知県建築基準条例第8条は、高さ2メートルを超えるがけに接し又は近接する場合に、がけの上ならがけの下端から、がけの下ならがけの上端から、がけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならないという形で、原則が距離になっています。愛知県は知事が定める場合をただし書きに置いていて、鉄筋コンクリート造や間知石練積み造(四角く加工した石を積み、裏側をコンクリートで固めたもの)で高さ5メートル以下、有害な沈下・はらみ出し・ひび割れ等がなく安全であることを一級建築士等が認めた擁壁が、そこに含まれます。

自分の県のがけ条例は、どう探せばよいですか?

「都道府県名+建築基準条例」または「都道府県名+建築基準法施行条例」で探し、目次から「がけ」の付いた条を開いてください。ただし市が独自に条例を持っている場合があり、そのときは県の条例が当たりません。神奈川県建築基準条例の解説は「横浜市、川崎市、横須賀市、相模原市、鎌倉市、厚木市、平塚市、小田原市、秦野市、茅ヶ崎市及び大和市については、独自に建築基準条例を制定しているので、この条例の適用はない。」と書いています。断り方も県で違います。神奈川県は市の名前を並べていますが、静岡県の解説は「※この取扱いは静岡県が特定行政庁となる建築物にのみ適用す」る、という書き方です。特定行政庁(建築行政を担当する市や県の部署)が自分の市なのか県なのかは、条文を読んでも分かりません。市の建築指導の窓口に「うちはどの条例ですか」と聞くのが、いちばん速い確認になります。

まとめ

  • 「がけ条例」という名前の法律はありません。 建築基準法40条を根拠にした条例のあだ名です
  • 当たり始める高さは東京都・千葉県・静岡県・愛知県が2メートル超、神奈川県が3メートル超、福岡市は敷地の高低差3メートル超
  • 傾きの線も違います。 東京都は2分の1こう配(約26.6度)、他の4県は30度超
  • 求められることは擁壁を設ける型と距離を保つ型に分かれます。前者が東京都・静岡県・神奈川県、後者が千葉県・愛知県です
  • 静岡県の解説は、がけの判断に擁壁の有無は問わないと書いています
  • 渋谷区は大谷石・コンクリートブロックの土留めをがけと同等に扱い、検査済証のない鉄筋コンクリート造も同様としています
  • ただし書きの中身は基礎の深さ・建物側の構造・流土止め。擁壁を造らずに済む道があります
  • 義務を負うのは建てる側です。 隣地のがけでも、愛知県は道路をはさんで一体のがけとみなします
  • 神奈川県だけで11市が県条例の外。市の独自条例を先に確かめてください

擁壁の書類の探し方は擁壁の検査済証に、新しく造るときの手続きは擁壁の確認申請に、傷み具合の測り方は擁壁の危険度にまとめています。市区町村別の外構まわりの制度はブロック塀撤去補助のDBから探せます。

※本記事の制度情報は2026年8月13日時点で、e-Gov法令検索の原文と各自治体の公式資料を確認したものです。条例は改正されますし、市が独自条例を持っている場合は県の条例が適用されません。計画の前に、お住まいの市の建築指導の窓口にご確認ください。

参考情報(出典)

家の補助金ナビ編集部

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